透明標本

干上がった海に熟れた西瓜が割れ落ちるよな

愛や恋を編み込んでいく箱に然られた綺麗事

傲慢な遺体たちに接ぐ 太陽とハロゲン帽

空いたハマグリのブローチに被されば曇天

気持ち取り残した朝日の影を踏む

未知に希望の名を示しながら

僕は思い描いたまま、土壌に墨を塗った。


飛んでいたカモメは湿て、虹見た刻に走り去るときもある

かえりたい かえれない はなさないから、どきどきするの

行き場のない 此処を庭に仕立てて、息継ぎと支えられた


お互いに見つめるもの、愛の形を生む。

歪んだ虹彩は額に弾け斜陽の断片を昇り

かつての夜の背を馴染め上澄みの脂を舐め照らす

崩しゆく空は落ちやしないとくすくす、笑っているかの

危うい嘘を見下しているアクリルの内側にて、


残念なお魚たちの啄み 覗き窓すら弛緩する

蒸しとした青葉から、ちらちら、がたがた、

葉を均し 影に隠れ 魅せている。

無秩序な鎚、あべこべな膣。

階下のおとうとが口角をあげて剥がれていく

居ても、経つても。

降りて来ないので、仕方なしと手を下した、

遺骸と位牌と喉仏が、

懐かしい屋根裏の香りに連れて

ゴクリと鳴る成る。土の被った明日の油蝉が

泣いているよな花火を潜し。

鼻についたよな、目に沁みたよな。

硝子瓶のあぶくたちは生まれては死んでいく

琉金。羽ヒレを戦がせた夏の日のこと

天をながめみる者達は息を止めたままだ。

みな一様に、たのしげであった。とも

ないていたとも謂われている。

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