第94話漂泊

開いたものは箱だったのか まなこだったのか


うちとそとは違うはずなのに 得たものは 庭 でしかない。

手の尽くしようがないほど 見てくれた家は美しくあり

しかし、巣食うものがは何であろうか 何かが蠢いている

心の奥底なのか。まあ、それこそが病理かもしれない。

あけすけなく 共に嗤おう。


夕暮れのカラスの歌声が腹を満たすように祈り

身を清めたもう 安穏に浸からんこと、願う。

今が狂うしか、薄明が宵闇が朱に妬ける 僕は、

ボクは、ぼくでしかなくて

星界は頭上にあり、届かぬもの、

だから 欲するのか 恐怖するか 欲を奔らせる


まなこにはどう伝染るのだろう


まだ見ぬ君に 未だ消え去ることなく

思いが胸に突き立てる者は

確かに存在していて、偶像であろうと

僕は故意に恋している、

平等な愛を ください。


時が風化する事象を己の頭は理解できていない

ふと気付けばしまいにたち、

憂うばかりの雨は上がりそうもない


あれを見上げるのが怖いのだ。頭上を圧迫するようでいて、

遠く知らぬ者の存在が空から落ちてくるおびただしい光を、

美しいほど燦燦喚く 闇に散らして、静寂に詠いながら。


星々は役目を終える

燃え尽きるのだろうか それともまだ、意志として残るのか

世の偶然を必然と変えられるほどの思いの強さがあれば、


或いは

君がそう見せて居るのか

僕がそう視得て要るだけなのか


このままでいい、

その方が知らぬもの存ぜぬものを懼れなくて 楽 なのだ

答えを求めていない。うち 籠る者と戯れる。

時 すべらかに進むだけだ



 何処へも逝けず翳と惑わし そこここに身を散らかす

 硝子のボトルシップが波間に辿り着いて

 後悔の記録だけを遺して、彼方あなたの存在を示す


 光と伏す。時に寂び憑いた緑青ろくしょう

 取り憑かれた陽に、何を捧げよう

 報われない愛と救われない心を詰めて

 木の実に焦げ点いた残照に少しづつ掻き立ててゆく


 穏やかに見えなくなる雪解けの春のこと


 跡形もなく、偽りとしか思えない

 生き様を浮かべ、海にとけこんだ ひと。

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