第86話無間

 わたしとあなたが挟まった きかん 足先から頭上までと定めた とき

 海に吐き出された 惜しげも無き よく

 土に還り点いた ふみ 固まる よ すみ に取り憑いた あか

 どうしようも なく


 何処に老いた者は 頑として 動かないのだ


 えん。の なか に立ち込める いくつかの彩りを手を取りて 汲まれた者は、

 少し、あまり ただ縺れただけ 充分、幸せに狎れるとは 嗚呼、


 疑う事無かれ 永るる雫、故 降らせよ震わせよ 其れは戦ぎ、 木々のざわめきも波風の流砂も 時の悪戯に操られ心躍らされるもの 底で馴染もうか 出逢おうが縁の糸は断ち切られた

 私に視覚はなく無数の芽が張り付いている 緋を浴びようが貶されようが感じることは無い 織り込まれた螺旋の格子 内に沁み着いた情と錠


 いく たび たび しに むかい ゆく


 こわれていく 僕も君も 今日も明日も 晴れ日和でも 腐ったままで踊る

 

 らくなすいそうにしずみたい

 みなぞこのひとつになりたい


 とぷとぷと沈んで生きたい 息できるぐらいに見えればいい 憐れみはいらないから 踏みつけないでおくれよ 知らないフリで一瞥くだせれば。

 なんだ、泣いているじゃないか 寂しいのか、そうかそうさ 馬鹿みたいだね、姿現して そうやっていつも本音の礎を創る


 ――うそばかりついてごめんなさい


 誰かに罪を着せ 何かのせいにして 恨みの矛先を向ければ 自らが正当化できて 楽に進めるのだろうか 感情の隙間に落っこちて無理やりほじくり返したものは見てくれも悪い模様で色めくこともなく、ただ鋼のように堅く在り、けれどすぐに錆び朽ちて終うものだと思うが


 片割れを影に潰された伴侶が薄ら笑う

 弛緩した薄墨が少しだけ身じろぎし、水分の中でゆっくりと時を刻む

 闇はそこから現れているようだったか、それとも、

 君のその腐り欠けた唇から紡がれていたのかもしれない。


 ともかく時は少しずつ星の砂鉄を集め身を凝縮させる、

 僕らはすっかり一塊になる、でも半分と半分がくっついても、僕らは三日月のままだった


 さて、空にぐんぐん登っていくことにするのだがどうしたって息苦しいもんで。脱ぎかけの骨とか皮とか、全部全部邪魔になりそうだったのでknifeも外に投げ捨てて、みひとり ゆくことにしよう。


 光はどうしようもなく、僕らを空けらかし、憐れみの眼差しとも取れる空虚の陽ばかりを映す、

 一点注ぎ込まれるくぐもり ひとしずく 眼差しが厭、に輝いて危うく。

 やはり、やはり僕らはここに雪を落としてはいけないようだ。影がないのだ、光散らすばかりで、何も残らないのだ。


 それは僕らにとって待ち焦がれたものであり、けれど、先がない未来でもあった。

 その光が慈愛なのか咎なのか、獄色の彩雲の糸となり番いに絡みついてねっとりとシミつかせるけれども

 なぜだろうね、くだらないけれどもいきたくないと駄々をこねるように、嬉しくもないもので笑えてくるし、苦しいはずなのに、泣けてもこないのだよ


 このまま行ってもいいものかどうか  まどってしまったから最後。  

 あんなにも何もかンも捨て去り覚悟してここまで来たというのに。  


 過去を振り返ってしまったんだよ  

 今までクソみたいだと思ってたものがねぇ  なんだか幸せな未来だったみたいで  もう遅いってよ  時の流れは無情に連れ  砂漠の足跡だけが残り  


 始まりは独り  終わりは二つ霜におつる

 はじまりのいちとゆくすえに


 砂漠に足跡を遺して 触らぬ神に祟りはない 生き延びることもない 見捨てられているだけ 只緩やかに死に向かう はて、普通と大差ない ただこの いらだち だけが らくに変わるのだろう

 うら疾しいか そうだな そういうことにしておこうな。これが襤褸化した道標だ。


 半回転した時計の揺らぎが作用する視点を持ち、動き出したB玉の速度を計算する。

 およそ半刻後に現れる半月が何時に見れるか一生を翔けて賭けをしよう。答えは永遠に出ないように蓋をしてな、空虚の中を駆け巡る思考の箱だろうから大事に終おう。


 わらっておくれ、よくわからないままで、銀色の円盤を舞われ。

 狂い咲いた椿の様に首を刈られたままで堕ちて生きたい。


 そのよそらがどこにあるのか

 いくたびたびしにむかいゆく

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