第70話風が泣いている

ただ花は嫋やか美々しく私の視界にうつるだけで良い。

実に酔い痴れるのだ。そして心は時に満たされよう。


だが一縷の風に乱され、簡単に吹かれて、

その場、亡くなる静寂の姿は陰を侍らせ、

良き思い出の侭に私の心に住む。

現は仏間の可憐な笑顔に取って代わる、

君の好きなガーベラを私から捧げし。


枯れないように手織り、

永遠の眠りに留めた、乾涸びた花に


それもまた生と死をうつしとる異形ではあるか、

未だ云うか然し削り花と大差ないのだ、

騙されている訳でもあるまい、

一体何を定めに置くのか、等と、

思わぬのが人の思考の単純さ面倒さよ。


生きた腕をもぎとり色を添えて花に似せる

これもまたうつくしとする

すべてみなみなのエゴであろうな おのれ、

しあわせであればよろしいのよ。


多々口添えすべきことではない、

それが悪であろうと愛であろうと。


生死など たかが、の筈だが、

さて私では愛してくれぬのものか

何をつぐんでおる。枯れて朽ちて、土に孵ろうとも、

誰が我らに水を差すのか


とは、私の癡ることではないのだ。

私は君を愛すると誓おう。


黴臭い独唱を花に与えんと

君が微笑むことはない、

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