第63話胎望筆

臙脂の衝立からつるりと生えた

ぴんからげの胎望筆を知ってるかい

闇夜に水の玉すかあとが

さいた さいた 痕から湧いた

大層まあたらしい 蓄音機のことさ。


呪詛を吐き出すことを拒み引き取られた

敗色を強めたすなっくさばと 朽木に棲う燐火

今日にまた お手柔らかに ほおりこまれ

あまく、あられ からく、おから だから。


いっぱいいっぱいの御愛想に粘着する

鉛筆代の棍棒はね 口は難くて使えやしない

耳掻きに揺らいして 攻撃力零、

ごつい図体で たりめえに はったりかますけれど、


永いお耳に赤いおめめの黒兎は可哀想に

可愛さだけでこちらを威嚇しているんさ。

きっと蟻地獄の入口付近でただいまって

抉られた土気色の飴玉、ほおばってさ

損な塩梅で積めて狂う、残念なみてくれだろうけどね

今夜は尽き余韻の盆の月って、そういうこと


ほらほら やめよやめよ、

哀れな末路を見せてくださんな

まだいきたくはないんだって。


かこはよなよなよなよ まだまだつるっぱげ。

明日が開けるよな、そんな時を与えような

駄々捏ねるばっかりの あかしややこの名

早う授けてくれんかねえ。

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