第57話結ばれないCROSS

優しいだけの君のそばで

眠りについてしまいたい


電飾は嘘つきの光をうつす

薔薇を撒く。化粧下手な聖夜、私のつら、いとおかし。

夢を食べ尽くして泥だらけで遊ぶ、いつかの自分が

次の幸せを届けに出掛けたままの彼方より、

先に現実に浸る、今も、思い出の蓋を開ける。

今夜もひとりきりひとしきり。雨もあまくない、

私に涙も振らせない、懐かしむこともない

ただ、大事に取ってあるだけの過去の女にも劣る。

ただ、つまらない、隣りだけのひと。



イルミネーションに飾る水槽に泳ぐ

彩造りの熱帯夜。

White X’mas。なんて何時かの御話

嘯いた出来事をクロスさせリボンで結う

からのプレゼントをその日だけ交換する


痛々しい硝子の欠片

琥珀に成り代わる私にとって、

どんな贈り物でもよかった。


天から羽が舞い落ちる

全てを解かす緋があった。

粉雪の世に灰が降る、

振られちまった子の底に

へばりつきても泥をも浚う

探しても見つからない

すり抜ける産聲

傾けない躯、空の眼。

紅葉に佇むその衝立の奥に。


ネオン街に吸い込まれる数多芥の戯れ

今宵ばかりの馬鹿馬鹿し愛に過ぎない


サンタも鬼も桜を愛でたい

今も祝宴を上げ続ける

春の宵でありたい者たち

夢現の感幻奏演会

歌い踊る洛陽は廻る


忙しなく 滞りなく ゆく年 くるう時

用意は常に勇み足でも

無限で繰り広げる楽園模様。


乾いた魚が涙もこぼせずに

そこに干からびて死ぬまで溺れている。




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