第55話はいのほし

 灰の星

 この世界に遺るエネルギーたちへ。

 この翼がなくなってしまう前に伝えたいことがあります。

 あなたの名を読んだら返事をください。

 無言でもいいのです、そこに私はいないのですから。あなたの心次第で、私はそこに簡単に生まれて死ぬのです。私は蝶にも蛾にも表れ、形を変え永い時を生き続けるのでしょう。

 思い出してみる、その視界に私は生きるのです


 底は苦しかったのでしょう、ばらまいた表層が無人の模造紙に擦り変わり、海の砂地に堕ちても風が羽ばたこうと、時は無情にもさせるのでしょう。

 今にも破れそうな千羽鶴、はぐれてしまったよ。もう無理はしないで。祈りは届かないかもしれない。でもいいんだよ。そこに羽をすぼめて泣いておくれ。

 私は報われる気がするから。願いは叶うのだから。


 焼け爛れ骨崩し白んで落ちてきた片翼の星。壊れない夜に、こぼれない世に。

 下下の満月の隙間から、そっと掬い取って、懸命に踠きあちらこちらに飛沫が発つのです。

 水辺の水鳥。

 待ちくたびれて、枯れてしまわないうちに、息がすぼまないうちに、その小さな芽から咲いた華々。みてくれの水仙。


 その嘶きで何を騙りこの身を揺すり集るか、全て小さな檻に込めましょう。

 それで終わり、始まりの鐘が鳴り響く、終幕。


 窒息しそうなほどたくさんたくさん、あなたと言うあなに私は埋め込まれ、何方も孤独が回る、息が続かないほど暗い、浅ましく混濁してきたらば、その腐りきった脳を、真ん中をくり抜いた頭蓋骨の器に、ばかばかりの復路を仰山の至高を詰めて、わらったままでいかせて。気持ちよく頂いてあげる。その手を貸して頂戴。

 この身から出た錆もくだらない言い訳、落ちるばかりの過去の思い出としまう。


 鳥籠に封じ込めタイムカプセルにしよう。そして、宇宙に打ち上げるんだよ。このクソ。ガ


 いつか私とあなたの手取り足取り、口付けあった空のペットボトルだけ

 達磨は高々、片目だけ拝借して、かといってらくしまうのでしょ、莫迦だネェ。


 やわら眼球は涼やかに瞳を堕として何もかも見透かすような遺体になる。

 好きだよって 簡単に、いってしまったか。

 自ら共に羽を毟る哀れな鳥たちは片翼づつ噛み合うこともない、喰らい尽くしただけなのだから。


 汚らわしい不浄に溺れ心は消えてしまった 光はまた抱いて金の光、落ち振れていく。

 何も見えないほど霞んで、手探ってもそこには何もなかった。

 食い散らかした羽だけがただ夕日に燃ゆる

 幸せな瞬間なんて一瞬。


 そのときにおわかれが見えてしまって生まれてくる焔と死にゆく生命も、繋がれた鎖、交わりゃしない縁の蝶々。時と主に泡沫に消える、世界は死を望んでる。逃れられない死が。

 そこが一番のてっぺんでそこに知ってしまった愛欲の星から、生まれる穢れなき命、孚孚たまごはぐくむ


 美しいとは思っていたはずの彼も、彼女もアナタも私もやはり穴に落ちてしまう。すっぽりとかぐわしい香りに吸われてさ助けることができるのは目配せ空いた人だけ。

 これもまた、未来に行くためのもので当然のことであるのですけれど、悲しいことでもあるのです。

 ぽっかりと眼孔、限りなく澄んでいたきらびやかな宝石

 誰からも愛されるその瞳、今、その瞬間、私だけを見詰めてください。


 さあ、焼かれてしまえ、炎

 抱かれてしまえ たかだかちっぽけな命共々

 どこまでも果てのない加速する、化石の星。


 そりゃあ、宝石というか。まあ綺麗だったのかな

 まがい物と蔑むのか、なんて後悔はしないでおくれ。

 それだけでも幸せというものなのです。


 もうどうでもよかった

 燃え尽きてしまった私の体は

 もうそこにはなくて

 そこには、黒々と炭化した

 何かだけが

 私として

 影を残している。


 あなたが救ってくれる、と、私の名前を呼んでください。

 その瞬間、私はあなたに移るのですから。

 後悔はありません。

 あなたが背負ってくれるのなら、この苦しみは癒される。

 思い重いもの紛い物手に取って掬われる命空柄。


 私は肺の星に、溜息と共になる。







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