第47話廃景

拝啓



掃除される簡略化的喧騒は浮ついて阿呆を露呈する。

今年も終わるのだ、と焼き付いた塵芥を崩して仕舞います。


さて、お元気でしょうか。

ひとつひとつきっちりと折り畳めれていくなか、その時間も惜しいから、清水の舞台から入(ゐ)らない屑を投げ込んで、空にして瞑ったらば。

葵の天秤に惹っ掻かり紫陽花の嘴は嵌れて、何時までも身透けた骨だけの姿を晒してさ。


それはとてもとても綺麗だった。

けれど結局勘違いも甚だしくそれは海の珊瑚に過ぎなかった。

けれども私達は共に泳げていた。

ただ、懐かしいだけのビデオレター、思い出すこともなかった。


アルバムの中で、歌声は思い出せなくても、言葉だけが

いつまでもリフレインを呼び起こし、

御懐かしく思うのです。

涙を流した朝があるか。そうだね。まだまだ、信じている。


今年も落ち葉が多量に散って新たな生命を育むために、声を枯らして叫んでいる誰かの拍子木。燃やしてしまえれば、簡単に破壊と再生を繰り返せる。

心など無くなってしまえば楽になれるのかもしれませんが。


はなはだ、あきあきしてはおられませんでしょうか。

ゆめゆめ、与えられる、嘘も本当も。


今まで生きていた小さなモノサシに依って皆の心の中に収められる棺を手に入れることができる。その中にはもちろん、私がいる訳です。


なくしてしまった、なんて、嘘。ついて、ごめんなさい。

心は生き続けるけれど、私はもうここにはいないのだから、果たして私が未来に繋ぐことができたのか。


間違えであったと思われたくもないのです。後悔のないように

できるだけ綺麗な私を残していきます。



今につながれている私と、彼方の

雲と霞と、弁明


敬白

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る