第45話ねえや。

 ねえやは真新しいお召し物に身を護られ梳とくと誇らしげであつた。

 

 明け暮れのどんずまり、吃音と方言のたどたどしい姿はお隠れに、まるで無愛想に見えやしないか。と心配にもなる 私は随分の過保護の仔猫を持つたものだと深窓に耽るもので、どうせ直ぐに襤褸を滲ませ私にだけのとつておきの鳴声で甘えて狂うのだから、問題は無いように解きを戻した。

 知恵の輪はわれ、外れない仕組みでもわいら吾等の暇は潰せやしない。

 

 それでも代わりは幾らでも容易にいだける人生を活き、手折り、こうべを垂れ流し全てを捧げる者も多く在りましたので、大して気には止めずに居た。

 然しゐてども経つども反って来ない、名前すら浸けやしなかつたモノだつたので、今更探しようも無く消えて始末た初恋を、不意にも思い返しては玩ぶ自らが窮めて可笑しく滑稽なコト。無邪気にも行い、鎖乍さなが何時いつまで腹を好かせようとも、永遠もどりてはこない時を独り此処でバラしている。

 

 咀嚼しては吐いた蠱毒の身はかなりやつかいな恋の病におされ腐蝕の一途一縷を辿る。

 穢らわしく臥し阿呆にはお似合いな病魔に犯され、私はゆめうつつにも彼女との再会を待ち、乞う迄こうまでして詫びているのだから、これは楽宴は祝いであると悟つてはいるのである。

 からしても事の顛末は曖昧で聞けども誰一人として彼女の存在を知りはせず。どころかはてさて私は夢でも見ていたのだろうか。と思うて終いに支度したくる。

 さて、ソレすらもどうでもいいほど長き年月を、私は、彼女に恋い焦がれて幸せに溺れ続けるのだから、たちが悪い、と翳から除いた ゲスい にも、おかずにもなりゃしない汚わしい遺失物すら、有無を云わせず固唾かたずせる楽な有様であるのだから。

 一生を曳きつられる、阿呆のぼんくらで在りたいと思ひ。

 

 底に彼女らの光と有りて共にいたいと申す、私とねいやとあるモノ、とが総てなのです。猫なで声で私を筆頭懐いて措いて、くぐもる空からは、愛も変わらず真っ当な明日の薄明が白々しく昇る莫迦理ばかり

 真っ当なお天道様からは誰一人として幸せには見えずとも、汝等は形見寄せ合い、ねいさまの息狭間を繰り返し刻み付ける身も心も、生まれ持つた今を、最大限に逝きけるしか道はございませんので、其れが、それしか道をしらぬもの仕方なしの幸とる所以なので御座いませう。

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