第40話明けの境

 いつからここにいたのか。

 生まれたのか、埋もれたのか。

 錆継いた短刀で白靄を切り裂くと、もう人掠りも吐くことがなかった水脈は、月陽のお陰か、おめめとおくちを手に容れた。

 ということは、間隔が契りを齎して明けが殺って来たのだろうと推測出来。感覚が狭まりを知り、そこにあると認識した筈だと、持ち得た もごもごとざわざわと、を、はいた。

 嗚呼、空いたあなぼこに虫唾が奔る。

 うちもそともそぞろ、無意識に漂着した「私」が底に詰め混まれた 柩に形成され、窮屈に渦を巻いた四肢を未だ解くつもりは無い。と、乾涸びた火種は、中心を未だ夜な夜な徘徊を繰り返すものであります。

 誰も彼も薄気味悪うて近づきもしない。

 有り様はわらわら折るモノで仰山賑やかに、ぐにゃぐにゃとバタバタと暴れ回る輪廻と、コロリとほろけた ぽつくり達のにょろにょろにしか、なりはしない。

 生きているのか、死んでいるのか、やはりどうでもよいことのように思われた。

 だからまたひとり此処で瞑ったらしい。

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