第34話 【私たちはセイレーン】
中身の無いボトルメール。
とうに朽ち果てた愛の欠片。
海が沈んでいる。果てしなく鈍色の天上を覗く光すら面倒くさい。歩みすら億劫でしかし、惹かれてしまうのは祈りであろうか、希望であろうか。
恋文らしきILoveYou。
何処までも際限なく灘らかなコトバたち。誰にも届かず、千を抜いて仕舞った、泡沫に、孵る屍の乞えを確かに聴いた。
この閉鎖された空間で祈りすら諦めるほど、歪んだ道はどこまでも広く遠い、答えが導き出せない迷路に自ら落とし混んだようだ。
再度私達が受け入れた聲は、波打ち際で幾度も遊ばれた貝殻となった。セイレーンに預けた唄はゆくゆくまで永遠と啼いた、鴎とも鴉とも成り。残響となった今、この生まれ逝く回帰の海に母を見たのだ。
読み聞かせた絵本の中で、ゆくゆく迄、永遠に鳴れ!!
やはりそこには満ちては引いて漣が心を浸しては洗い流すように夜は現れる。そこは深淵の星星が揺らいでいる光を抱いて眠る。
子供達は白夜のカーテンを率いて、幸せに向かうだろう。白鳥の羽で包まれ着きて、行く末も逢えて。何時か逝く。
ようやと更待月。夢物語の続きをいつか彼らは書き起こすのだろう。夏が終わるときに。
過去も未来も行方知らずの黄昏にどこまでも続く海岸線。
寄せては返す波に足を浸せば、ほら、
何時だって変わらないその波に涙を零して、浸ればいい、大いなる海の器は何事もなく掻き消して、心音にも似た雑念で子守唄を詠うのだ。覆われてしまえばいいのさ。簡単に、嗚呼、楽に呼んでくれ、私の名を、彼方の腕で捲れ。
その絵本は人生というを思い出にすぎない。
蜃気楼とも走馬灯とも、瞳を閉じる時に、完成される、今。シリウスを探しているマヌケなニンゲンの詩。
秋も過ぎる頃に、原点回帰。
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