第31話【正信愚者】

精一杯頑張ってもみんなが貰える残念賞

ジャッケットの奥に忘れ去られた蝉の抜け殻

この身体に造り上げられた まるで 聖者でも

苺の缶詰を少しだけ、ミルクで溺れさせた義務教育


ダンボール箱の中の赤らんだ桜桃(さくらんぼ)

穢れた血を崇め奉りヒトツキに処した7年目

何も可も不可も無い程に潰し川に流して欲しい。


全て粗い流せばいいのに嘘つきは上手に隠された

ひとたま 零れて落ちた 予々(かねがね) 嵩は増すばかり


星くずが煽る 私だけのドライブ 滑空する答案用紙

今日が何時だって構わない 待ち構える恋に蹴りを放つ


あおいそらしろいくも うんざりとした字面に華を裂いた

変わる代わる洗われる その面に刃物を突き立てて殺した


鏡の中のふたつ ヒトツキに生まれた罅 割れた硝子に伝染る

飛び込んだ夏の蟲 泣いただけの線香花火 雪兎は解けて溶けた

イロを無くしたクレヨンは描けない空を上塗りする雲に成る


掬われない後悔 浮わ憑いたマトリョシカ

赤い実 眼は零れて 蒼い鳥に啄まれて

目隠しされた傷が開く 貝殻の音に還りたい


生まれた日死んだ日 生誕祭 さようなら わたしたち。

【正信愚者】

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