第25話【朱野鳥】

なまぐさい ぬるまゆ

優しく絞め殺して

底にわたしは息を憑くの。


子守唄は盛大に

脳髄を垂れ流すわ。


あたたかい 寝台

砂糖菓子で出来ていて。


声色は滴るから

芯から中心を引き裂いて。


ねえねえ、

どこでゐってもあなたがいないよ


嘘吐きの林檎は熟れて焦嗄れた。


夢の中まで忘れてしまった

奪ったのはあなただったと、


声を聞かせて


苦楽も留めて弄り求めて。


歌を沈めて


聲を奪われ冥い杜に

鳴り止まない断末魔が


喰らい暗いと哀願するのね


私を犯してくれた

孔に飽いたらもう終い

知らない夢のあぶくは散って


ああああ世紀末なんて知らない。


美味しく 底に

惜しくも 頂きを


難の苑、未知はひとつ夜

そのこんなに緩んでいく空似


路上の朱の花。


踏みつけられ揺らいで射るだけ

水たまりにすら辿り着けない


妖艶な陽に

殻が崩れた蛭は

ときにすら


愛されやしないのだから

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