第24話 いちごひとつむ

いちごひとつ

あげるからさ。


摘み喰われても

無くなりはしないけれども。

ショートケーキ

お手手洗ってくださいって


土下座しなよ。ナア、

想像より遥かに夢の様って

酒浸り、叫び足りねえなあ。


風が泣いてるなんて莫迦な事

信じちゃあいない、けれど。


銀のフォークに刺され死んじまった

あんたらの供養だから

残さず平らげねえと逝けないって、


学校の先生教えてくれなかったな

墓前に手向けるのはなんだって

丸裸の己だから、着せてくれるのか?

徒花、腐っちまったか、もう遅いか。


死人に口はない、全くの無駄

だって知っている

誰が救われるかって、

奔り去った過去も未来も

ヨイヤミカラスに食われねぇように

生き急いで喰らうかな。


息て埋まれる、粋地獄にヨウコソ

適当に過ごしなよ

避けられはしねえ逃れられない時に

追い負い架けっこなんて阿呆らしい。


ないているんだ

やっぱり

頬は濡れている。

君も僕もみんなみんな。

大きな声で叫んでいるはじまりを待つ。


最期に無くは空の瞑(つむ)、

眼を見開いたまま。

だったら私の魂に伝染る

わらっておわかれを

今にさようならと、後に遺して。


いちごひとつぶ

たべたかったのに、零れて泣いた。

今が過去に存在する、彼方に

捧ぐ、吹き消された炎。

慶弔 【一期人瞑】

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