第22話明け透け哭く

【明け透け哭く】


 3晩回って吠えた犬に小便をかけられた。

 今日も最悪だった。明日も屹度そうだろう

 忠実であれ。空は今 辛辛 見上げたくもありはしない。

 何もかもが有り得ないさまだ。


 それにしたところで君、

 新たな産声を持って還れとする蟲が

 湧いてしまったようではないか。

 のらりくらりと御休みの処、申し訳ないのだが。


 之は死体ですから、仕方が無いと悟るしかない?

 簡単に云うけれどね、此処は いま、なんだよ

 何時までそうしているつもりだい?

 小賢しいことに幾ら祓っても、心中は吝(やぶさ)かではない

 自ずと許せないだろう、安くはない、命の値段ってやつだな


 此の侭餓鬼として喰らい尽くす愛も併せて寄り添いながら

 したらば、穏やかに君も私も終われるのだろうか。


 などと語らない君とこうやって対話するのは楽しいものだよ。

 生前はなかったことだ、


 嗚呼


 否、


 時代が違うのだから君が私を知るはずが無い。

 とまあ全く素直なものだね

 だがね、然しそうであろうか、

 はっきり言うとね、誰とだっていゐんだよ。


 書物の登場人物にはハクがついているかもしれないけれど、

 言ってることは大差ないんだ 。

 何時の時代もそう所詮見てくれの数じゃないか、だけどね、

 声を上げなきゃ見えねぇンだ、気づかれもしねえさァ。


 だから頭に死んじまった御天道様相手にぶつくさ騙っている。

 ようはねえ心の底に堕ち零れた阿呆の末路よ。


 ところで今穴の空いた桶を覗いてるのは誰だい?

 眩しくってゐけねえナア、及びもつかない、君には。

 また会えるといい、嗚呼、終いとも

 ないていくのだろうね。

 まあ狭き道も広く うまれゆくも運命ってやつが。


 納戸の隙間に嵌って動けず

 感情の糸口は細く苦楽粘ついて離れない

 網膜をゆっくりと崩すように指先でつまむ。

 どちらの味方に点けばいいのか。ひとしきり思い出が悩ましい、


 結局はみ出し者はひと夫々(それぞれ)ひとりきり。

 生前を偲ぶことしか先に往く方法はないのである。


 そう、申していたのは君であろうに。

 今日はもう啼射てくれるな

 寒々しいほど風にあけらかす(こぼす)陽よ、

 嗚呼墓前のわたしをわらってくれるな。

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