第21話【めくるめく】

 躓いて腐り落ちた月の欠片。

 暗色の物陰、凛燐(りんりん)と下る中、囁くは甘い微風に、尋ねて廻るひとりごと。もう等に道は外れ人としての誇りも見失う。燃え尽きた灰にも均しい天地を見据えれば滓のような薄曇りが燻すよう。

 ほのか月明かりにぼんやりと蝕まれる。

 年輪の数だけ走馬灯が廻る、描かれた根っこの隅に腰を下ろした、あらぬ方向から今が真実を漂流させる。滲んでしまう得(え)が枯れた地が息吹を嘔吐せぬように留め、口元を隠した蓋(おお)うけれど、確かなことは恐ろしく案の定怖くて仕方がない。震える手で必死に押し殺した激情をまた誰かに擦り付けようとしているのか。

 嗚呼、見たくもない世界など潰して暮れよう、と己の視界を楽に処す。

 軽くなったようで重くなったみたいに、光と影が瞼に鮮烈な悼みを遺しては散った異界。永く遠い命達。未来を思い出が駆け出しては、追いすがる赤子は大きく産声を挙げ続ける。けれど吐いて捨ててきたこの這い出流、痕だけを掬い挙げるが。

 過去も未来も黒く盲れる、どこにも光などを見出せもしないのに時間は自ずと捲られる既設、描かれていく筆跡は春の如し羽を纏い、綴られる瞬間をあてどもなく放浪している。ときにこれは至極楽なことなのです。

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