第20話草葉の陰

 赤い紅い身を沈めぷくぷくと息を吐く。

 クワラルンプールの隙間から脱漏した 葉書を飛ばす。

 摩天楼の隙間を這い出流 蛹たち。

 無事 胡蝶に到り羽根は翔り

 うたかたの子宮を旋回する生易しい風を纏う、

 さんざめく羊水を経て 鋒を見出した彼ら。

 ようやと救われることでしょう。

 小さくも可愛らしい姿となり金魚鉢の奥底で催促する 錦の欠片たちは、

 記憶を媒体とするトルマリン戸口を開け示し 此方を伺っています。

 決して中を覗かないでください。

 棲息した深淵を除くとき 彼処(あちら)もまた 真円を覗いて射る。

 シュレディンガーの狂猫(くろねこ)が彼方此方へ

 惹き掻き回すのが常々で有るからして惑わす。

 私達の存在は死後世界であり唯の雑音に過ぎず。

 お気に為さらずと申しましたのに、囚われてお終いになられたようで。

 熱帯雨林に生息する蟒蛇(うわばみ) 空けの明星、

 いっとう奪い取るよう首を括る。

 ORIONに願いと祈りを。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る