第11話女生徒

 女の子と隣に歩くのは初めてだと思われる、毎日記憶が塗り替えられるんだ、だから、本当であったかなんてわからない。まあ、どちらでもよかった。

 傾くままの夕闇が迫る美しい薄状に導かれるように階段奥へ奥へと進んでいる。怖がりの彼女はひたと足を留めるのを地に囚われないように、無駄にぶらぶらさせていた触れそうで触れられない素の剥き出しの腕に思い切って指を絡ませたらば、こちらをキッと睨むのである。さすれば、手を離してしまうだろう。何もかも解枯れるように屹度手折ってしまいたくなる。

 などとやり手もしていない思考の渦の中で、いつもいつも葛藤し続ける。

 夕暮れ時、階段を掛け登れば彼方に追い着くのだろうか。

 未知の深淵で覗けない日の浅い下履きの襞が、此処を覆い尽くしているから。憐憫の残香が、何時ぞや拾った皺塗れの手拭きから、握られた事は無い、阿呆の利き手に依って汗ばんで、ゐってしまう今日のしまいに、バイバイと包まれる。

 声だけで越えられる未だ、道程(どうてい)の至高は一筋とも足(垂)らされる。

 夕暮れ時のイメージ、濡羽色の鴉たちが声色で伝えていく。

 たったそれだけのこと、明日もまた会えるのだろう。

 まだ出会えぬ君に、とも向かって息を吐いた。

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