第8話 惹き契る。

 貴方の花弁、ひとひらひら

 愛を確かめるように弾き契る。

 

 すき きらい すき きらい 隙 帰来。

 

 余りに溜まっても捨て去る勇気もない私達

 せめてお大事にと、小奇麗な袱紗(ふくさ)で包みます

 あなたは思って流した泪とも痴れない紅色が点いた夫婦茶碗、

 一欠片割れてしまったけれど、穢れたままで愛し、

 こくりと呑み下すのは さよならともおはようとも、

 理解し難いほど苦いだけでした。

 そうしてまだ見ぬあなたの輪郭を黒縁で覆い、

 窓辺に作られた枠組みに小さく孔が空いている。

 

 小さな秋桜。彼岸の地、ただ風に揺れたままでねむりについて。

 暗転に召されてゆく、落陽の軌跡。

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