第5話金糸雀

 あなたの最後の役はとてもとても綺麗なものでした。

 はあ として生きをくるめ、潤んだ睫毛が震えて、すうと、何もかもが飲み込まれる。その漠然とした乞えに。


 誰も彼もがいなくなる。

 誕生にはあなたひとりが、粛々と淡々と紡がれていく一つの世界が。あなたのその端正な唇から、世界の人が奏多の歌に乗せて、

 その瞬間、生き生きと、まざまざ見せつける。

 心に侵食していくその奏上、その瞬ぎが一生私を苦しめるのです。


 壇上には誰もいない。

 唯狂ったメロディーを奏で続ける、私のためのマリオネットが、誰に操られるわけでもなく。

 底に埋められている。

 私の手で全て終わらせた為に。

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