第4話 【風の浮気】
特に何を決めた訳でもなく、平日急にふってわいた手持ち無沙汰にふらふらと電車やらバスやら飛び乗りまして。
よくは覚えていない、けれどこの手元には未だに小さなかみふくろがございます。ですから、やはりこれが空蝉なのでしょう。
底が透けて見えるような……実は穴が開いているだけの、泣いているのは誰であろうね。
このぽっかりと呆けた奥底から、消えちまったのはそう熟れた林檎。真っ赤な眼。
ああ、添うそう、のろくさく持ち上げたつもりだったのですが。
つる と朝露に落ち 塗れ 溺れちまったよう、
ウマが合うのか夜な夜な優しく柔らかな心地で其れを喰らうのを楽しみにしておりました。
見知った始まりの鐘はみっつ。
マア、丑三つ時ではござんしたか。
ハア、ハメ外し酒に溺る拙い藪蚊は泣かず飛ばずで。
ソウ、地を求めます、如何して欲深いものですね。
夢にまで見た願いを叶える毒林檎。
蠱惑無骨な腕ひとかけ併せるだけで、表向きは傷一つ無い簡単に知り得る、等々出逢えたことこそがキセキのミチ。
もう動けない、食べられて閉まって。
もくされている。
私をみないで、何も言わないで。ないているのか。
道端に落ちていたきれいきらい(帰来)な欠片は、そりゃそりゃあ。息も絶え絶えに此方を睨んで。
織りました赤い明いの野花で冠を有し、摘み取っては美しく風にそよいではらはらと
想いも重いもうもうと燻去る。
囀る青空と生還した祖の命は汚泥に転じ、滔々に齧られた赤い身ふたつ。先行きの見えない未来になすすべもなく口も封じられ、闇雲に追い風が楽を取ろうと躍起になり只只踊るしかない。
地は金の山、針の眼光に2人ともに串刺し。
その日に焼かれ焦げているだけのあほうどりの肉塊。
中身など元から消え入りそうな心に掬っていた、染みに他ならずそれが、抜けたことにより漸く岐路に立つ。
帰り道は始まりとも癒える、今。
蒼穹に展望を覗く陽は赤く除く秘に。
故に私たちは番と相乗り。
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