Verde

@souju27

プロローグ

声が、声だけが、きこえる。

焦った、必死な声。

応えを、待ってる声。

ひとり、ふたり・・・さんにん、かな。

落ち着く声。

可愛い声。

頼りになる声。

そのどれもが、悲しそうで、泣いちゃいそうで。


ぼくを、よんでる?


唐突に、そう感じた。

確かめなきゃ。

心の中で呟いて、目を開けようとする。

けれど、なかなか体が言うことを聞いてくれない。

十秒ほど経って、ようやく薄目を開けられた。

声の持ち主たちはすぐに気が付いたみたいで、それぞれに笑う気配がする。

視界を広くしようと、もっと目を開けると、

あまりの眩しさに、思わず目を閉じてしまった。

驚いた。

真っ白な世界に閉じ込められたのかと。

もちろん、そんなわけもなく。

落ち着いて、今度こそ目を開ける。

少しだけ冴えてきた頭で、改めて周りの情報を仕入れてみようと試みた。

しかし、そうすればするほど、ぼくのなかに違和感が生まれてくる。

白い壁。

白いカーテン。

白いベッド。

白い冷蔵庫。

白い手紙。

嬉しそうに口々に話しかけてくれる三人。

知らないもの、ばかりだ。

次の瞬間、違和感が形になってぼくの感情をたった一つに支配した。


恐怖。


それにおしつぶされまいと、何とか声をしぼり出す。

「えっと・・・その、あの・・・だ、れ・・・?」

次の瞬間、空気が凍り付いたのを感じた。

すべての引き金であるこの一言。

ぼくたちの日常が、壊れる音がした。

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