tea party 8
【茶番8】
「漆黒。全てを飲み込む最強の色彩。最も俺様を表現する色だ」
色彩が死んだ、モノクロの世界。
ヒビ一つ許さない確固たる世界に、黒い泥が降り落ちる。
『煌めきも色彩も、あの人にとっては甘美な餌でしかない。そんな強靭な魂だからこそ、誰もが惹き寄せられる』
水色の声に、高月さんは顔を上げた。まるで壊れたラジオのような、不気味なヒビ割れ音。
マギア・メルヒェン、大道寺真由美。彼女はゲーム盤の前に還ってこなかった。それは即ち、生き残って次の世界に至ったということ。
『そんなあの人のことを語れるのは⋯⋯⋯⋯私しか、いない』
バン!
女傑がゲーム盤に両足を投げ出した。あまりの力強さに盤が凹む。
『あの人が実は寂しがり屋だということを、私はこれまで知らなかった。その貪欲の根幹を、こんな風になるまで、まるで気付けなかった』
バン!
『ちゃんと、自分の目で、気付けたら⋯⋯⋯⋯あの人を救うことが出来たのかも知れない』
バン!
『彼女はどんな存在になっても、その本質だけは決して見失わない。手に入れたものを全て失う、そんな恐怖を自我の強さで超克した』
バン!
『不幸 事故だったわ。まさに世界の損失よ。まさかマギ の急所である 臓を貫くなんて』
バン!
『あの人なら、生身でも交 事故くら へっちゃらなの。あん 車 滅茶苦茶になっ 、折 ハンドルさえ刺さ ければ』
バン!
『 念の怪 と化し 、それでも自我 繋いだ。でも、それも くは かない』
バン!
『うん⋯⋯私なら、私だけが、きっと招 入れて える。だから、私が行くの。 を叶え 行 だよ』
バン!
『 の隣 ちゃんと つ。絶対に 戻すんだ。
だからね、アリス。私に⋯⋯行かせて欲しい』
バン!
『ねえ。聞 て、高月さん。 は、貴女を救 たい。貴女 一番 りたい。それ 私の夢で、そ 私の戦いだ ら』
バン!
『そのためなら、貴女と真正面から戦うよ。
高月 あやか さん ⋯⋯⋯⋯』
バガアアン!!!!
「上等だ」
ゲーム盤が木っ端微塵に砕け散った。ヒビ割れた水色の音声はもう聞こえない。マギア・メルヒェンもとんだ置き土産を残していったものだ。
少女あやかは、叩きつけた踵を軸にぐるりと起き上がった。不気味な、化け物じみた挙動。砕け散ったゲーム盤の上を、土足で踏み立つ。
「大道寺。お前の挑戦、俺様が受けた」
天から降り堕ちる黒い泥を受け入れる。精神を病ます病魔の汚泥。それを被ってなお、より一層、その猛禽のような目付きが鋭くなる。
研ぎ澄ませ。
漆黒の魂――その煌めきよ。
漆黒の巨人が屹立する。六つの眼球がその周囲に巡った。迷いの六道、その輪廻の象徴。湧き立つ黒い腕、這い回る無数の目。その全てを少女が統べる。
そして、宣言する。
「ラストゲームだぜ!」
「フェアヴァイレドッホ――――
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