八、「決着をつけようぜ」

アリス・オリジン

【アリス、色彩起源】



 魔法に憧れていた。

 きっかけはそんな子どもっぽいものなのだ。それが、あれよあれよと大きくなって、私はいつしか世界を救ってしまったらしい。らしい。そう私自身が言うのはおかしいかもしれない。でも、私はそんな大それたことをするつもりはなかったし、何より、本当に世界は救われたのだろうか。

 救いってなんだろう。

 女神ってなんだろう。

 私は生まれつき体が弱くて、なんにもできなかった。いつも夢を見ているだけで、世界に手は届かない。ある日、魔法の使者が現れた。私は元気な体を手に入れた。外の世界に駆け出せた。

 手が届いた。届いてしまった。

 なら、伸ばし続けるしかなかった。


 不思議の国に誘う白ウサギ。


 私にとっては運命に他ならない。


 めっふぃ、貴方は私にとっての『救い』だったんだよ。


 何も持たない。何も出来ない。

 そんな私が魔法の力を得た。私自身の願いの力だと言ってくれた。こんな自分にも出来ることはある。だから、たくさん頑張った。世のため人のため、それが私の夢だったから。

 一つだけ心残りがあるとしたら、えんまちゃん。私は貴女が想うほど立派な人間じゃない。けど、そう言ってくれるからこそ、私は立派に頑張れた。お別れは悲しい。でも、それがえんまちゃんのになっていたことは、私、分かっちゃうんだ。

 傍にいてくれて、本当にありがとう。私にとっての貴女も、きっと特別だった。私の一番の大親友。


 私が生身のまま情念の怪物となって、マギアたちはそんな私を女神と呼ぶようになった。違う存在になっていくのが自分でも分かる。暴走する想いの怪物から人を守るため。想うことは素晴らしいことだ。だから、想いが怪物になっちゃうなんて、絶対にイヤ。

 やっと自分の存在理由を見つけた。だから、後悔はない。

 ずっと夢見て、ずっとやってきたこと。それを未来永劫ずっとやっていく。



「太陽は――世界を照らす純白の救済⋯⋯そして、永劫輝く白い回廊」



 太陽は46億年も輝いているらしい。

 私もきっと、同じだけ戦い続けるのだろう。


 世界を救いたい。そんな私の願いは確かに叶ったのだ。

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