tea party 5

【茶番5】



「純情の緑、理想と現実の乖離に溺れた癒しの光」


 モノクロ世界。カップの取っ手をつまむ高月さんは、冷め始めた紅茶を一口含む。


「不相応な理想は、破滅への入り口。どこかで折り合いをつけていくしかないわ」


 お相手の少女は辛辣な言葉を吐き捨てる。スコーンを囓りながら伏し目がちに招待主を見遣る。乾いた笑みが色の無い世界に響いた。


「そこで折れちまったら物語もなにもないだろうぜ? お前だってここにいたかどうかも怪しいもんだ」


 その口が、三日月のようにぱっくりと割れる。


「譲れねえもんがあるから、魔法が発現した。それがマギアの資質ってやつだ」

「一度賭けに乗ったら逃げられない……スパートの命運は既に尽きているのかも」

「運命を打破するのが英雄の物語だ。だからこそ、人は惹かれる、魅せられる。俺様のあやかもようやく始まりそうだぜ」


 空になったカップに注がれるのは、真っ赤な液体。今までと違う趣向に、少女は招待主を睨んだ。不敵に笑う高月さんはそれを一息に飲み干す。


「次は正真正銘の英雄物語。ここで詰めさせてもらおうか」


 彩度が消失した世界で、その姿は一層濃く現出する。

 お茶会は続く。盤上の世界を眺めながら。少女も赤い液体を飲み干した。盤面に置かれる黄の駒。






「ヒロイック――――情と信念が入り乱れる英雄伝説の開幕だ」

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