tea party 3

【茶番3】



「魂の彩、意志は色を纏って燃え盛る。太陽のようにな」


 モノクロ世界。少女は伏し目がちに招待主を睨む。


「これから創られるのは新たな神話だ。世界を救うヒーローのお話。燃えるだろう?」

「…………そうかも」


 スコーンをリスのように齧る少女は、その香りに頬を染める。次に、格調高いロイヤルを雑に口に放り込む高月さんに辟易した。


「抱えている想いは千差万別。彼女たちには、それぞれの物語がある。だから、そんな駒みたいに軽々しく扱うものじゃないわ」

「俺様に言わせれば有象無象だが、まあ概ね同意してやろう」


 尊大な招待主が、小さく手を叩いた。浮かび上がる駒の数々。その駒の一つ一つに鮮やかな色が付いている。


「想いの、意志の力は色を成す。俺様としては、そんな浪漫は嫌いじゃない。これはそういう物語だからな」

「神話に至る、とでも言いたげね」

「そりゃそうさ。果たして、どんな色になるのか楽しみでならないよ」


 浮かぶ駒の数は、既に倒れた橙を除いて四つ。自慢気に弄ぶ高月さんに、少女は睨みを効かせる。

 赤の駒。

 緑の駒。

 黄の駒。

 黒の駒。


「ようやく、本当に物語を始められる。ここからが本番だ」

「勝負だとか、勝ち負けでしか物事を決められないのね。本当に、野蛮」

「言うなよ。これが俺様だ」


 揺るぎない自己肯定。テーブル中央のゲーム盤に、モノクロ世界の主人は赤い駒を叩きつける。






「デッドロック――――求めた正義に潰れた、どっちつかずな物語だ」

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