トロイメライ・デッドエンド

【トロイメライ、破壊神の顕現】



 運命の至る空。最果ての時。


「なに、が…………起きた――――?」


 暴風が肌を叩く。地面は抉られ、数十メートルもありそうな建物が数えきれないほど浮かんでいた。膨大な熱量を放つ火球が、無造作に世界を破壊する。

 まさに、世界の終わりだった。


「なんなんだよ――アイツ…………」


 あやかには何も出来ない。飛来した瓦礫の山に下半身を潰され、身動きが取れないのだ。暴風に巻き上げられ、火球に崩壊する世界は、紛れもなく現実のものだった。ここはネガの結界の中ではなく、高梁中学の跡地。あやかは、校舎だった物質に下敷きにされている。


『あれが『終演』だ。人の呪いが世界を刷新する伝説のネガ。人間の概念で示されるところの、破壊神。僕はね、君にアレを打倒して欲しいんだ』


 デッドロックとスパートの死体が暴風に飛ばされていた。デザイアはとっくに高梁を捨てて逃げている。神里の上空に浮かぶ超ド級のネガ。戦っているマギアは、たった一人きり。


『君には期待していたんだけれど、どうやらここまでのようだ。さて、本格的に手詰まりかな』


 暴風で、ウサギの耳が揺れる。点のような目で、表情なんて概念のない顔で、終焉の光景をただ見つめている。


「めっふぃ、まだ手はあるぞ」


 あの、黒いマギアがどこまで戦えるかは分からない。しかし、『終演』を撃破して万々歳とはいかないだろう。そう都合良くいかないことはよく知っている。


『不可能だ。君の力は確かに強力だが、状況を打開するには及ばない』

「だったら、だ。俺の魔法の性質は『反復』。そう教えただろ?」

『それが?』

「俺はッ! 何度もこの世界を繰り返している。だから、次は負けねえ! 次のループで奴を倒す。もっともっと強くなって、本当に世界を救ってやるッ!!」

「――――――――は?」


 三十階建ての高層ビルが、真っ逆さまに付近に着弾した。凄まじい衝撃だった。視界も、聴覚も、思考も、全てがブラックアウトする。


「反復。繰り返し。ループ? そうか――その仮説なら納得がいく」


 めっふぃの声が耳に届く。だが、その言葉の意味を咀嚼する余裕は与えられなかった。

 直後、巨大な火球が命中し、あやかはめっふぃ共々蒸発した。

 

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