tea party 1

【茶番1】



 モノクロの世界。

 まるで影絵のような世界に、果ては見えない。ただ、そこには中心だけがあった。即ち、このモノクロ世界の主。お茶会の招待主だ。


「どうした? 座るといい」

「ええ――――失礼するわ」


 少女は、恭しく一礼した。

 巨大な丸テーブルの上に、チェアが二つ。テーブルの上に広がるお茶菓子を眺めると、招待主は指を弾いた。透明な給仕が紅茶を淹れる。


「へえ、貴女でも嗜むのね」

「味の良し悪しは分かんねえけどな」


 香りを堪能した少女が、眉の間に皺を作る。至高のロイヤルが、まさかのペットボトル感覚で飲み干される。そんな悪夢のような光景に、少女は抗議がましい視線を送った。だが、豪胆な主は歯牙にもかけない。


「お茶会を始めよう」


 悠々と二杯目を注ぐ招待主が宣言を放つ。

 その力強い踏み込みが、床を叩いた。中央、モノクロのゲーム盤にいくつかの駒が浮上する。駒は、このモノクロ世界でなお、色が付いている。


「⋯⋯お茶会? これが?」

「余興だよ! ただ茶をしばくだけじゃつまんないだろ? 催し物としちゃ中々楽しそうなゲームってことだ」


 その言い様に、少女は苦々しく顔を歪める。その反応すらもお気に召したららしい。三日月のようにぱっくりと裂けた口で豪快に笑う。歪つで不気味な大怪会談。少女はごくりと息をのんだ。

 そして、モノクロ世界の主はその駒の一つを摘まみ上げる。


「まずは、こいつだ」


 叩きつけるようにゲーム盤に置いたのは、橙の駒。

 対する少女は、意を決したように言い放つ。


「ええ。そのゲーム、受けて立つわ」


 少女は、至高のロイヤルを一口つついた。気分が落ち着いていく。ゲーム盤に、少女の視線が下りた。その視線には、覚悟が満ち満ちている。






「さあ、勝負よ――――高月さん」

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