The tea party begins

【茶番開幕】



 この世界には、色がない。ただ、闇と影だけが蠢いている。闇には魂があり、陰には形があった。影は、豪奢な椅子に腰かけている。尊大にふんぞり返り、君臨する支配者の存在感を醸し出している。


「ようこそ」


 モノクロ世界の主は、爽やかな声で来訪者を迎えた。その声にも一本芯が通っており、存在の強靭さが滲み出る。


「こんにちは」


 可憐な、少女の声。やや震えているその姿を見て、影は舌なめずりをした。


「どうした? 近くに寄れよ」

「あら、不躾ね」


 少女は強がって、皮肉を言ってみせる。いじらしい。影は上機嫌に両腕を広げた。


「さあさ、席に着くんだ。物語が始まるぞ」


 影の前には大きな丸テーブル。その上に浮かぶのはおいしい紅茶とお茶菓子の数々。そして、モノクロのゲーム盤。






「始まるぜ――――奇天烈爽快、主人公ヒーロー誕生秘話だ」

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