18歳と1日。No.2
「ねえ真奈美、聞きたいことがあるんだけど」
「うん、何?」
「あのさ、真奈美が18歳の誕生日を迎えた時に変なアプリが勝手にインストールされたりした?例えば、CHANGERとか...?」
笑みを浮かべていた真奈美の顔が急に真剣な様子に変わった。
しばらく沈黙が続いた後、彼女はゆっくりと口を開いた。
「もちろん。実を言うと、私もう使ったことあるのよね」
「え」
予想外の言葉に動揺を隠せず、私は言葉を失ってしまった。
ガヤガヤとうるさい昼休みの教室の音が耳に入ってくる。
はっと我に返り、私は真奈美を少し軽蔑を含んだ目で見た。
「そっ、か。そうなんだね。皆普通に使ってるんだ」
「そうねー多分18歳以上の日本国民で使ったことない人なんていないんじゃないかな。テレビで見る芸能人だって皆どこか『交換』してるのよ。その時に出た交換した芸能人の元パーツは、いつもオークションにかけられる程人気なの。私は誰の身体かなんか気にしないけど、自分が気に入れば。CHANGERのコミュニティでオーダーしたパーツは宅配便で翌日送られてくるの。パーツと一緒に麻酔と交換道具が入ってるから、それを使って自分でやるのよ。ちなみに私は真っ黒だった両目を、ダークブラウンの目に交換したの」
「あ。私、真奈美はカラコン入れ始めたのかなって思ってた」
「そんな毎日外さなきゃいけない目よりも、そのものを変えた方がいいじゃない?こういうの『お得』っていうのかしら?」
昼休みに真奈美の話を聞いてから、なんだか全然授業に集中できなかった。
お得?お得って何よ?パーツを交換するとか私バービー人形じゃないんだから。
☆☆☆
部活を終え、学校を出ようとした時、ふと校門の側で友達とふざけ合っている同じクラスの
「まじかよ、お前彼女できたのかよ!誰々~?」
翔の肩をツンツンつつきながら友達の一人がダルがらみしている。
「何?北野七瀬だって?!あんな美人すげーじゃん‼」
キャッキャッ騒ぎながら、三人が静かに聞き耳をたてる私の前を歩いていく。
そうなんだ。
私は茫然とその場に立つ尽くした。
茜色に染まった空が余計に悲しさを煽る。
「北野さんに、なれたらいいのになあ」
その瞬間、私の中で何かの糸がプチンと切れた。
「ふふふふふふふふふふふ、あはははははははは」
自然と笑いが溢れだしてきた。
私の身体は勝手に動いていた。ラインを開いた私は真奈美とのチャット画面を開いた。
【真奈美、ちょっと質問なんだけど。パーツってコミュニティ外からのものの使用は可能なの?それと、道具って有料なの?そのものだけ取り寄せることって、できたりする?】
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