18歳と1日。

はあーよく寝たー。

アラームの音に深い眠りから起こされ、今日も私の一日が始まった。

外はもうギラギラと太陽が顔を覗かせている。


「りーんー朝ご飯出来てるわよー」

「はーい」


のんびりと返事をし、私はだらだらと学校へ行く支度を始めた。

いつものルーティン通りに携帯に手を伸ばし、友達からラインが入っていないかチェックをする。グループチャットのメッセージが百件も届いている。

まったく、くだらない話を夜中までしてるから皆授業中眠いんだよ。


さーてと、そろそろ降りるか。

...ん?なんだろう、これ。

見覚えのない真っ黒なアイコンがふと目に留まる。

アイコン名もついていない。なんか不気味だな...。

でも、ちょっと覗いてみようかな。

勇気を奮ってアイコンをぽちっと押すと、いきなり文字が現れた。


~おはようございます、佐竹凛様。ようこそCHANGERへ。まずは凛様のアバターを作らせていただきます。~


ーカシャー


え、え、なんかいきなり写真撮られたんだけど!?

しかもCHANGERって...。昨日お父さんとお母さんが話してた嘘くさい話に出てきた名前だ。


~アバター作成完了。本日はどちらのアイテムのお取替えをご希望でしょうか?~

・顔パーツ(目、鼻、口)

・腕(左/右、指)

・足(左/右、指)

・胴体部分


ーバサッー


私は思わず携帯を地面に落としてしまった。

衝撃と恐怖で体が動かない。

昨日の話が頭をよぎる。もしあの話が本当だとしたら...このアプリのいう「アイテム」って、生身の人間の身体。


「りーんー!早くしなさい、もう八時よ!」


お母さんのちょっと怒りのこもった声で現実に引き返される。

とっさに冷たくなった指先でアイコンを長押しし、バツ印を押して消去しようとした。

でも、消えない。


とにかく、私はこのアプリを二度と開かなければいいんだ。

そうだ、真奈美はもう誕生日を迎えてるし何か知ってるかもしれない。


どたどたと大きな音をたてながら私は階段を駆け下りた。


「いってきまーす!」


この時、私はまだ気づいていなかった。

自分の愚かさと、欲深さと、決断の弱さを...。





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