カラーズ。

こひまらま。

18歳と0日。

「凛、18歳の誕生日おめでとう!」

「おめでとう、大きくなったな」


パーン!と派手なクラッカーの音が鳴ったかと思うと、フルーツたっぷりのショートケーキが運ばれてきた。


「うわあ、美味しそう!早く食べよう!私切るから」


テーブルの上に置いてあるナイフをさっと手に取り、私は目の前のケーキをすぐさま切り分けようと立ち上がった。


「待ちなさい、ちょっと大事な話があるんだけど」


顔を見合わせた両親が何か決断をしたかのように一度頷き、私の目を見て口を開いた。

いきなりどうしたんだろう?


「凜はもう18。もう選挙に行けるのよ。でもね、あなたが今日手に入れた権利は選挙権だけではないのよ。実はあなたには『ドリームチェンジ権』も与えられたのよ」

「ドリーム、チェンジ、権...?何それ」


今度はお父さんが声を潜めてぼそぼそと語り出した。

暗闇の中揺れるキャンドルの灯の光が、なんだか不気味でぞっとする。


「日本ではな、人間の身体を取引している『CHANGER』というコミュニティーがあるんだ。嘘みたいに聞こえるかもしれないけど、自分の身の安全のためにも真面目に聞いてほしい。日本国民は18歳を迎えると、皆CHANGERに参加する権利を得るんだ。凜、もちろんお前もだ。そこでは自分の身体の一部と、市場に出ている他人の好きな体のパーツを引き換えることができるんだ。でもな、交換する度に自分の本当の身体が失われていく。どんどん自分ではなくなっていく。それって恐ろしいことだと思わないか?だから、絶対に一度限りにするんだ。分かったか?」


真剣な目で私をじっと見つめる両親があまりにも馬鹿げた話をしだすものだから、なんだか私は呆れてしまった。

身体の交換?CHANGER?何それ。そんな如何にもホラー小説に出てきます感の話されても、笑うしかないんだけど。


「えーと、うん、わかった。お父さんとお母さんは私を怖がらせようとしてるんだね。わー、怖い怖い。あはは」


しーんと静まり返った場を何とか和ませようと、私は無理に作り笑いをした。



それでも二人はニコリともしなかった。




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