一章

一章 因習と過去の惨劇 1—1


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 明けそめる空に金星が見える。

 暁の星。


 あの星を見ると、思いだす。

 遠く、なつかしい日々を。

 同じ時をすごした友のことを。


 そして、あの悲しく恐ろしい事件のことを。


 あれは、まだ魚波が二十歳すぎの青年だったころ。

 自由にあこがれ、いつかは広い世界を旅してみたいと夢見ていたころ……。

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