第8話 別れ2

 喪主であるお母さんはバタバタしている。ぼくはというと棺の中のおばあちゃんをじっと見つめている。安らかな顔をしている。

 そうして十一時前になった時だった。

 親戚の中にお父さんの姿が。

 それを見たお母さんがお父さんに駆け寄る。

「あなた、いつ来たの?」

「さっきだよ」

 お父さんはそっけなく答えた。

 ぼくも二人の元に行く。

「お父さん、来てくれたんだね!」

「おう」

 そして十一時となりお葬式が始める。

 ぼくとお母さんは最前列の右側のイスに座る。お父さんはそのうしろに。親戚の人々も座っている。

 お葬式が始まってから、ぼくは改めておばあちゃんとのお別れについて考える。もう少ししたら、もう二度とおばあちゃんの顔が見られなくなる。

 もちろん悲しい。大好きだったおばあちゃん。もう会えなくなるの? どうして? どうして人って死んじゃうの? それってつらい。

 せっかくお母さんと再会できたのに、おばあちゃんとはさよなら。ねぇ、なぜ最後は会ってくれなかったの、おばあちゃん。

 お経を聴いてそんなことを考えたら涙が出そうになる。

 もう二度と会えないおばあちゃん。

 さようなら……。

 それから棺の中のおばあちゃんに花を飾る時間になる。喪主のお母さんが初めにおばあちゃんへ花を飾ることとなった。

 お母さんは棺の中のおばあちゃんの頭をなでた。そうしてひとつ目の花をおばあちゃんの頭の横に。

 代わる代わる人々も棺に花を入れる。

 花を飾るぼくは涙が出そうだ。

「お母さん、これからは苦しまなくていいのよ……」母は目から涙が一粒、また一粒と流れる。棺のそばでお母さんは言った。

 お母さんとおばあちゃんの愛を見た気がする。

 そしてぼくも目から熱い涙が溢れた。

 ぼくは花を飾る。その間、ずっと涙が止まらなかった。

 お葬式は終わり、少しだけぼくはお父さんとお母さんの間に立っていた。涙を流しながらだけど、嬉しかった。

 ぼくとお母さん、親戚数人が火葬場へのバスの中へ。お父さんは乗らなかった。

 お母さんも泣いている。

 ぼくはずっと涙が止まらない。

 火葬場へ着く。

 おばあちゃんを入れた棺は最後のドアの向こうに消えていく。ああ、これでおばあちゃんは旅立つのだな……。

 轟々と火が燃える音。

 亡くなったおばあちゃんを燃やす音。

 お母さんは涙を流してドアを見つめている。

 涙を流すお母さんの肩をぼくはトントンとした。そして振り向いたお母さんにぼくは頷いてあげた。安心してね、お母さん。ぼくが居るからね。


 おばあちゃん、今までありがとう。

 お母さんを大切にするよ。

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