三面六臂の魔神と九の顔を持つ女神

第8話

自分にとって無価値であるもの、過去も現在もまたおおよその未来まで含むかも知れないが。

またそれが美しいのです。

イジデンはそのように感じていたし、考えてもいた。わたしは自分にはない、わたしにとって無価値なもの、過去や他人に対しても、美しいものだと信じていたいのです。

シグラモは九つの顔を持って彼を迎えた。

太古大地には人はいなかったが、三面六臂の魔人と呼ばれたイジデンと、九の顔を持つ女神と称されるシグラモとの、微笑ましいカップルから、すべての善悪は生まれたとか。

機に病むな。木に病むな。期に病むな。

偶然ということばは使いたくないが、

それらはすでに裁かれている。

今は今であって、君は君である。

君は草原の上をかける風であって。

それ以外の何者でもない。

君はわたしは、いまを生きているし、考えるよりも多くの人がいる。君こそが風であって人であるから。