第27話 3月

3月という季節はこれまでなんども過ごしてきた。


卒業式を迎えて3月が別れの季節だという認識は多少なりともあった。


それでも今、この瞬間俺は別れの季節というのを猛烈に痛感してる。




雨が降り続き、時間はもう23:00を回った。


さっき母親から電話がかかってきて、もう帰ってこいと怒られた。


佐倉からの返信も電話もかかってきてない。




今まで隣にいる事が当たり前だった存在。

メールを送ればだいたいすぐ返信が来たし、

電話をすれば折り返し電話がかかって来ていた。



ー ここにきて嫌われたかなぁ



もう俺の心はポッキリと折れていた。


今までどんなに強い相手が現れても、

それを乗り越える自身はあったし努力でどうにか出来ると思っていた。



でも。



連絡の来ない相手にどう立ち回っていいかが分からない。


嫌われたのなら、ちょうどいい。


キャリーケースに入れるか迷っていた写真たちは全部自分の部屋に置いていく事にした。



ずっと雨に振られていたので、故障してないか心配したが

ウォークマンは無事に起動してくれた。


イヤフォンジャックをウォークマンに指し、耳にイヤフォンをかける。


イヤフォンの方は片耳が壊れたのか右の方からしか音楽が聞こえなかった。



ー 新しいやつ、買わなきゃな・・・



壊れた方のイヤフォンは耳から外し、右耳だけイヤフォンをかける。


ランダム再生を始めると、ちょうど今日の日付がタイトルの音楽が始まった。



ー なんともドラマチックな選曲だな



雨とは違う、少し暖かな水が俺の手のひらに落ちた。

降り続く雨に紛れて自分の目から涙が流れる。


悲しい


というのとは違うような気がする。


この時ほど、時間が戻ることを願った事はない。

最初から正直に言えばよかったんだ。


和樹さんにアメリカ行きを言われた時に

すぐ佐倉に言えば謝る時間はたくさんあったんだ。



イヤフォンの音楽に耳を傾けていると、雨の音はだんだん聞こえなくなった。

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