第10話 アイリからエリーに

 アイリの意識が戻ったのは柴田技師長のラボの中だった。アイリは周辺の様子をチェックしていた。この時、愛莉の自我はモード切替によってガイノイドモードになっていた。そのとき、愛莉は少しがっかりした。やっぱり、自由に行動できないんだと。


 「続いて二体目の全身拘束刑の執行が終わったわよ。本当に大丈夫なのですか? こんなことをして?」


 柴田技師長の手には分厚い封筒があった。その封筒には高額紙幣が詰められていたようだ。電子マネーが普及した現代、ここまでの現金を使うといえば自己満足のためか、はたまた非合法な報酬を受け取る場面しかなかった。


 「ああ、ちょっとした司法取引をしたのさ。こちらの方をアイリにするからな。今回のミッションが成功したら元に戻す約束にしているからさ。結構大変だったんだぞ、司法省行刑局の中にいるスパイをフル動員してやったからさ。

 まあ、長い事は騙し通せないだろうから、早期決着するしかないさ。それに、連中の尻尾を掴むチャンスなんだからさ、なあエリー!」


 淳司はエリーと呼んだことにアイリは混乱した。すると制御システムが書き換えられるのが分かった。それは神原瑛梨という全身拘束刑の受刑者で、罪状は・・・秘密! 全身拘束刑15年だった、年齢は・・・19歳? なによこれ?


 「おはようございますエリーです。そちらのアイリと一緒に帝央大学に派遣されます」


 派遣? 一緒に? アイリあらためエリーの中に存在する愛莉はパニックになっていた。それもこれも帝央大学は通っていた大学なのに! 学生で行っていた大学にガイノイドとして働かないといけないわけなの?


 「おはようございます。アイリです。一緒に刑期を勤めましょうね」


 アイリだなんて! なんでなにをやったのか分からない受刑者に自分の名前を使われているのか理解できなかった。すると、淳司は頭部にUSBメモリーを接続してあるプログラムをダウンロードした。それは瑛梨のパーソナルデータだった。そのデータによれば本当は瑛梨という受刑者は存在せず、様々な理由で遺棄されたガイノイドを組み立てて製造した真性の機械だった!


 「そうですねアイリ、一緒にかんばりましょうね」


 どうやら自分は入れ替えられたという事に気付いた、いったいこれってなんなのよ? 愛莉の自我は騙されたと思っていた。ここまで込み入った事をするのだから、淳司はとんでもない事をやろうとしているんのだとわかった。


 「それじゃあ、二体ともスリープモードに入りなさい。必要な情報はスリープ中にダウンロードします!」


 そういわれ、アイリとエリーはスリープモード用のカプセルに入って横になった。その時、隣のアイリと自分の姿を確認すると、まったく外観が同じだった。だから二体は双子ロボみたいだった。でも、二体は全身拘束刑の受刑者とされていたが、内臓は全く異なっており、しかも入れ替わっていた。

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