夜ヲ想ウ、ウタ
つきの
仄かに昏い
夜は真の闇ではない。
覗き込むと
完全に見えないわけではないから、
尚更に、もどかしく、怖い。
人も影のように、ぼんやりとはわかる。
でも信じてはいけない。
それが本当に人だと何故わかる?
もしも、人であったとしても、
人なら信じられるのか?
人ゆえの恐ろしさを、どれだけ見てきたか。
じわじわと声を奪う。
痕を残さず真綿で締められる感触。
人でも、人でなくとも怖い。
ヒトデナシ。
嗚呼
それはしかし、わたくしではないのか。
あの影は、わたくしではないのか。
わたくしの後ろ姿ではないのか。
過去の?未来の?今日の?
あれが、いつかのわたくしではないと
言いきれるというのか。
心の深淵を覗き込み過ぎて、
トポンと墜ちた、わたくしは
ぷくぷくと小さな
ゆっくりゆっくり沈んでいく。
仄昏い場所から真の夜の底へと。
ぷく、ぷく、ぷく、ぷく、と
声が
嗚呼、月がもう、あんなに遠い。
わたくしの声、あの最後の
あれは子守唄になるのだろうか。
それとも
夜に魅せられて、
溶けて夜と混じりあっていく、
わたくしには、もう、わからない。
あの歌を聴くのは誰だろう
闇に
わたくしの遺した
夜ヲ想ウ、ウタ。
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