積み木






ひとつ


ひとつと


重ねた積み木



しつこい傷で汚れた指で


そっとひと押し


崩れた積み木


ばらばら


ばらばらと


倒れた積み木



かつての姿は


遠い望郷


傷だらけの手を伸ばしたとて


残るのは忘れたい亡霊



目を閉じ

耳を塞いでも

消えない過去の傷の亡霊



陽が山の向こうへ眠る頃

静かに燃える空模様

背に横たわる影に潜む

亡霊の腕に抱き締められる温度

仄かに暖かいのはきっと

孤独に安堵するための幻想


傷に服を着せるように

藍色になりつつある空で染めた指先


ひとつ


また、ひとつと


倒れた積み木を


重ねていって



忘れてしまった自分が出来上がれば



きっと


やっと、笑える



笑えるはずなのに












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