第4話 雨

ぱたり。

ぱたり。



雨樋(あまどい)からコンクリートに垂れる雫。

雨上がりに聞く音。



ぱたり。

ぱたり。



雨音は一体、何に似ているのだろう。

そう、聞かれた時僕は何故か思い浮かべる。



天ぷら油に似ている。

と。

揚げ物を揚げる時の音。

あの音と雨音は、僕にはとても似ているように聞こえる。


僕がただ、食い意地がはってるだけなのだろうか。

そうかもしれない。


だって。

だって、僕は食べる事が好きだ。


だから揚げ音に聞こえるのだろう。


でも、とても似ていると思うんだけどな。


ああ。


わかった。



雨も、油も液体だからだ。


跳ねる音は似ていても可笑しくはない。



家族には末期だと言われたけれど。

僕は決して末期ではない。


あ、でも、独り言ぶつぶつ言ったり、一人で会話完結してしまったりするのは末期と言われても否定はしない。


"普通"は変だもんね。そんな人。


"普通"、は。



まあ、何が"普通"なのか、"普通"の基準は何かなんて僕は知らないけどさ。


いわゆる?

"一般的"とか、"普通"の考えに当て嵌(は)めると僕は普通じゃないらしい。


良く変わってると言われるよ。


そりゃどうも。


僕は量産型人間は嫌なもんでね。

変わってるは褒め言葉だね。


もっと言ってくれよ笑



さて。


話がずれたぞ。


何だっけ?


そう。


雨。


僕はじめじめした雨が嫌いだ。


むしむしじめじめでホント嫌になる。


でも、雨の匂いは好きだ。


昔から。

何故か僕は雨の匂いが好きだ。


雨のあの、独特の匂いが。




田んぼに跳ねる音。

水溜まりに跳ねる音。


雨の、匂い。


傘に落ちる雨音。

雨の中、走る車の音。



僕の、好きな音。

僕の、好きな匂い。



でも。


雨は嫌いだ。



誰が何と言おうと僕は、雨が好きにはなれない。


外に出る気は失せるし、予定は潰れる。

洗濯物は乾かないし、服は濡れる。

窓が開けられないから家の中の空気は重い。


一番嫌なのは車に水をぶっかけられること。本当に嫌だ。


上から降ってくる雨よりも濡れる。

胸辺りから下、全部濡らされた時は本当に腹がたって仕方がなかった。

車が通る度(たび)に車道に傘を向けなければいけない。

やつら、自分等(じぶんら)が濡れないからって何様のつもりだ。第一、車は凶器ってことを忘れてるんじゃないのか?


いや。

もういい。

思い出すだけで腹が立つ。


ああ。


そう。


兎に角(とにかく)僕は。


雨が嫌いだ。

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