第七宵 桜が赤く色付いてとても綺麗だ。

さっきから木片や木屑出てきた砂埃ならぬ木埃が舞っている。

でも、その現場に俺はいない。

ただ外野で、とても安全な運転室に大人しく扉に嵌め込まれた小さな窓からその惨状を見ているだけ。

そう、俺は役立たずなのだ。


「何時までそこに立ってんの、座りなよ?」


そう言って箱から取り出したポッキーで反対側の椅子を指す。

でも、俺は横に振る。

座ったら、何だか自分のせいでいろんな人を巻き込んでいるのにその状況から逃避し逃げたした感覚に襲われるような気がしたからだ。


「君も真面目だねぇー。これは別に君が悪い訳じゃないのに、こんな奴前にもいたな。あの子もとんだお人好しなんだよねー、何だかんだ言って。まあ、君よりかは断然強かったけど。」

「弱いのなんて、自覚してます。貴女方と違って俺は経験もこの世界に関しての知識も無さすぎる。」

「・・・きっも。」

「何でですか!」

「ねぇ、よく考えてみて?会ったばかりの女の子を生年月日から身長、体重、その他もろもろ黒歴史とかをさ、知りたいって言ってるのと同じことなんだよ?それって君らの言うストーカー・・・ってのと同じ思考なんじゃない?」

「・・・まぁ、考えてみれば気持ち悪いですね。」

「でしょ?だからさ、そう言うの別に考えなくても良くない?急いだってただの付け焼き刃にしかならない、だったらいつか大切な仲間が皆がピンチで自分一人しかまともに立ってられないその状況で自分が守りたい物を守れるように、活躍できるようにしたら。」

「・・・そうですね、はい。分かりました。」

「・・・一寸はましな顔になったか。でも、この事件で君は活躍できない、出ても正直足手まといになる。今はその時じゃない。だから、はい。」

「貰っていいんですか?」

「いいよ、美味しいものはシェアした方が倍美味しいし。」

「何か薄情な気がしますけど・・・頂きます。」


サクッと音を立ててチョコがかかった細い棒が簡単に折れ、口の中にチョコの甘さと少し塩っけのあるクッキーが丁度良いバランスで口の中に広がった。

その甘さに心が落ち着かされる。


「あぁ、二人でポッキー食べてる!」


横から梅宮さんの声が聞こえて、思わず変な奇声をあげ飛び上がる。

それを聞いて、梅宮さんがにやけている。


「君、面白いねー。」

「さっきストーカー発言してたけどね。」

「え・・・嘘、如月さんにそんなことしてんの?」

「嫌、マジな顔してこっち見ないでくださいよ!そんなこと言ってませんって!・・・いや、少しそんなこと言っちゃったって言っても別に嘘じゃぁ」

「うわぁ、大胆通り越して変態だよ、それ。今から地獄行く?」

「今から買い物行く?見たいなのりで言わないでくださいよ!行きませんって!」

「嘘なのに取り乱してるとこ御免、道留ちゃん、影角は?」

「意識飛ばした、多分如月駅着くまでは寝てると思う。」

「こわぁ、流石酒呑童子に見惚れられた獄卒は違うよね。」

「夢乃ちゃんだって天邪鬼に指名されてたじゃん。」


なんの事か着いていけず、俺の頭に無数の疑問が浮かんでいる。


「君はまだ知らないのか、霊界獄卒は地獄にいる獄卒みたいに力がない、だからさ妖怪に力を借りてるんだよ。でも、それは借りる相手の合意がなければならない。でも、両者の合意があれば霊界獄卒の仕事をしている間だけ力を借りれる。個人差があるけど借りる妖怪によって体力の消耗が少なからずある。」

「酒呑童子は体力の消耗が半端ないよね、立ってるのもきついんじゃない?」

「いや、そこら辺は加減した、けど暫くはここから動けないかも。」

「そっかー、乙。」

「軽く言ってるけど大丈夫なんですか?」

「慣れるまで丁度いい力加減が出来ないよね、強いときはとことん強いし、弱いときはとことん弱い。」

「あー、それ大変だった。気を張ってなきゃ思ってることとやってることが違うことあった、天邪鬼だからそう言うのには慣れなきゃ面倒臭い。あ、もう少しで彼奴の区域抜ける、多分もう大丈夫でしょ。」

「そうだね、後は如月さんにこの子回収して貰うだけ。」


ガタゴトとさっきより軽快な音を立てて、如月駅へ向かっている。

話を聞く限り、如月さんはもう駅に着いて、汽車がくるのを待っているようだ。

外は相変わらず不気味だ、けれどさっきとは違い、白い光が点々と並んでいる。

それをぼぅっと眺めている。

その光を見ていて別に悪い気は起きなかった。

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