(続)完全なる自殺スイッチ

宮脇シャクガ

順番の入れ違い

男は死んでいた。

何が起こったかを時間を遡りながら追ってみよう。


“必要ならば、本人の自殺によって起こり得る影響の処置―――例えば遺族の従死を防ぐための記憶操作や、あらゆる社会的な責任の解消をも施せるという。”


普通に考えてそんなに都合のいいものが存在するわけがない。

だが、順序が逆ならばどうなのか?


本人の自殺によって遺族が喜び、或いは遺族となる身内が自殺を依頼し、あらゆる社会的な責任のない、それどころか周りにとって「いない方が良い」人間にすでになっていたとしたら。


ことの起こりはおそらく、家族からの依頼だろう。

政府の大規模な社会実験のためにそれは行われた。

周囲の人間に少しずつ協力してもらい、男の居場所を慎重に奪っていった。

WEB広告をのぞいたときに表示されるマイクロビッドされる情報に少しずつ割り込んでマインドコントロールを深めていった。


もともと職場でも元気に出勤する他は何の取り柄もない奴という評価だった男はこの作戦にとって格好の標的だった。仕事に行くことがつらくなった。

近所からの悪意もわずかな報酬やデマ、知り合いの知り合いからの口コミで少しずつ広がっていった。うかつに外出もできなくなってきた。


ついに耐え切れなくなり、男はスイッチに手を出した。

そして、係が処置をした。


以上の推理をみなさんは現代日本の自分には無関係と思うだろうか?

こういったことは社会に出てお金を稼いでいたら当然あることだ。

ましてや、こういった場で作品を発表しているんだ。


あなたにも身に覚えがないとは言わせない。

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(続)完全なる自殺スイッチ 宮脇シャクガ @renegate

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