第四証 その後の行動
けたたましい目覚ましがなる。
それは夢から現実へ。
一段と重い瞼を抉じ開け、目に入る情報を精一杯取り込もうとしている。
力強く握っていた手をゆっくり広げると、赤い表紙に翠の止めゴムがしてあるメモ帳があった。
それを見て何か込み上げるものがあるが、其れを胸までに留め、状況を確認する。
大部分が赤黒く染められ、乾いたワイシャツ。
まだ少し手の平に残った誰かの血。
やっぱり夢じゃない。
夢であればどれ程良かっただろう。
虚ろであろう目から光をかろうじで取り込む。
時計は7:30
久しぶりに休みたい気持ちが渦巻くが自分のしなければならない事。
其れを思い出し、奮い立たせる。
あの子の、如月さんの最後の言葉。
犯人に仕掛けなければ、如月さんに死んでも面目がたたない。
その思いで、学校へ行く準備を急がせた。
「あれ、如月さん来てないね、どうしたの?」
そう言われて、言い訳を考える。
取り合えず、熱が出たようだ。と返すと興味無さそうに俺の前から去っていった。
どうやら、如月 幽花が死んだと言う情報は新聞にもないし、学校内でも出回っていないようだった。
それは不思議でならなかったが、考えれば考えるほど胸が苦しくなるので止めた。
自分はボロを出さずにいかに相手にボロを出させるか。
言葉遊びを成なければここでの駆け引きは不成立。
如月さんに託されたメモを開くと、いつの間に書いたのか犯人、殺害方法、動機が事細かに書いてあった。
後は自白させるだけ。
「おい、さっきから外見てどうした?」
担任の夏村先生に出席簿でしばかれる。
地味に痛い。
頭をさすっていると、声が降ってくる。
「今日の連れ、どういう事情で休んだか聞いてるか?」
「あぁ、熱で伏せてるって聞いてますけど。」
嘘を並べ立てると、そうか。と言われて話に戻る。
最近、如月さんと一緒に行動している性かたまに付き合ってるのかと冷やかしなしで言われたことがある。
俺の方は嬉しかったが、如月さんの反応は少し困ったように口角を上げていた様に思えた。
そんな思い出にまだ浸り混んでいるといつの間にか日が傾き、わらわらと人が出ていっていた。
そしてついには俺だけが机に肘をついて外を窓越しに仰いでいる姿を影に写すだけとなった。
静かな空間が広がっていた。
端からみたら絵になりそうだ。
何て戯れ言を頭で思い浮かべた後、教室の掛け時計を見る。
もうそろそろ。
そう思ったとき、一つの音が静かな空間に割り込んでくる。
俺はその人をみて一礼をした。
そして辿々しく焦りが含まれた声を振り絞る。
その人は親しいはずなのに言葉がうまく出てこない。
見かねたその人が俺より先につらつらと言葉を並べ立てた。
「どうしたんだ?大空が来いって言ったのに黙りは無いんじゃないのか?」
「そう、ですね_____詰貝先生。」
「そんな改まってどうしたんだよ?もしかして、何か嫌なことがあったのか?」
そう言って話をなんとか繋げようとしてくれる。
この先生は好みじゃないけど、優しい先生だなって思う。
だからだろう、今から振る話はお門違いだと自分でも思う。
今だって信じたくない。
「先生、あの二人が離婚すると言う話聞いてましたか?」
この話題は振りたくなかった。
この話題を振ってもし先生が肯定すれば
「ああ、知ってたぞ。」
犯人だと確定してしまうから。
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