第二証 嘘のような日常

翌日、学校は何事もなく登校となった。

新聞でも昨日の事は報道されており今の所自殺の線で事件の解明を進めてるとの事。

如月さんの回りには既に人が集まっており、楽しそうに会話していた。

それを横目で見ながら、自分の席に座る。

すると、俺の所にも人が集まってきた。

どういう質問をされたか気になったらしい。

後、如月さんとの関係も。

俺は適当にあしらうと興味を無くしたのか火の粉のように散っていった。

それを見計らって、如月さんが声をかけてきた。


「随分と人気者なんだねー。大変だね、毎日。」

「そうでもないよ。昨日の事が気になって話し掛けてきたっぽいから。興味がなくなればこの通りだよ。」

「そっか、別に格段人気者って訳でもないんだ。」

「そうだよ。」


自分で言うのもあれだがメンタルが傷ついていく音が幻聴が聞こえてくる。

心做しか視界が歪んでいるような気もしてきた。

どうしようか、涙でそう。

そんな俺を他所に如月さんは淡々と話始める。

昨日の夕食。

面白かったこと。

色々。

それを頷きながら時々意見混ぜながら話を聞いていた。

そうしている内に予鈴がなる。

名残惜しそうにシュンとなる如月さん。


「次の休み時間おいでよ。続き聞くから、ね?」

「本当?!」

「本当、本当。」


そう言うと笑顔で去っていく。

昨日の事件が嘘のような日常だ。

でも昨日の事は現実に起こったこと。

実際今居るのは、第一教棟の一階の第五選択教室な訳で、事件のあった第二教棟の同じく一階の俺らの教室はまだ規制線が張られ関係者以外立ち入り禁止の札が吊るされている。

クラスの奴が数人興味本位に行ったみたいだが、すぐに見つかって追い返されたと言う話が風の便りで回ってきた。

先生の話を右耳だけで聞き、目と左耳は話に出てきたあの教室を捉えていた。

窓か空いている上、外は静かなので風に乗ってあの教室で話していることが少しだが聞こえてくる。

先生の話四割、教室の話六割に割り振ってSHRは過ごした。


「外向いてたけど、どうしたの?」


休み時間如月さんにそう聞かれた。

見られてたのか・・・

嘘つく義理もないので素直に、外の様子が気になったから見てた。と伝えると、ふーん。と興味無さそうに呟くとさっきの話!と話の続きになった。

凄く楽しそうに話す彼女を見ていると、こっちまで笑みを溢してしまう。

話の佳境に入った所で、邪魔が入る。


「如月、もう友達ができたのか?良かったなー。」

「あ、詰貝先生!そうなんですよ、樹君です!」

「そんなのは知ってるさ。少なくとも如月よりかは長く関わっているからな・・・ん、大空若しかして如月といちゃついてたのに邪魔されて怒ってるのか?」


俺の顔にそう書かれていたのか顔を少し覗き込みながらそう言ってあははは、と笑い出す。

この先生は生物担当の先生で、女子の間でも格好良いと評判の先生だ。

でも、たまにこうやってデリカシーの無い言葉をかけられたり、痛い所を無自覚で抉ってくる為、俺は正直苦手だ。

そんなことを頭で繰り広げられてるとはつい知らず如月さんと詰貝先生は話を展開していく。

くそ、俺よりも話進めるのうめぇ。

こういうときにコミュ力がない事をつくづく恨む。

それに追い討ちをかけるようにチャイムがなる。

気分が沈んだまま、授業に入ることになった。












「・・・君。」

「・・る君?」

「・つる君!」

「樹君!」


そう聞こえたと同時に物が落ちる音が近くで聞え、反射的に飛び起きる。

驚いて目を丸くする如月さん。

机の下に散らばる鉛筆と教科書。

時計は12:45を指していた。

どうやらいつの間にか寝落ちしていたらしい。

目を擦って視界が鮮明になるまで待つ。

はっきり見えるようになった所で如月さんにお昼をどうするかを聞いた。

帰ってきた答えは、中庭。


「それじゃ行こうか?」

「うん、其れにしても驚いたよ三時間目から爆睡してんだもん。先生も呆れてたよ。昨日寝れた?」


そう言ってクスクス笑う。

寝てないのは認める。

あんなの見て寝れる奴はどうかしてると思う。

其れよりも如月さんに醜態を晒してしまったことが問題だ。

人生最大の汚点だ。

いや、これ以上にあったな、確か・・・

思い出すだけで顔が熱くなる。

あぁ、もう恥ずかしすぎて穴があったら埋まりたい、今すぐ。

そう言う意図を正直読み取ってほしくなかったが残念ながら読み取ってしまった様で如月さんに、落とし穴作っとこっか?と言われてしまった。

穴を作ってくれるのは嬉しいが、落とし穴は止めてくれ、切実に。

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