人よ人世の怪奇譚~壊された日常と救った彼女~
日向月
第一証 俺と彼女の出会い
ある日教室に入ると死体があった。
手を重ねて、男女が胸から血を流し、俯せで倒れていた。
近くには一つの刃物が。
「う、うわあああああああああああああ」
そう、日常が一気に崩れた瞬間だ。
自分でも情けないと思う悲鳴を聞いた先生が駆けつけ、事の起りが明らかになった。
慌てて警察を呼ぶ人。
慌てふためく人。
知らずに扉を開け、パニックに陥るもの。
興味本位に見に来るもの。
SNSにあげようとするもの。
それを止めるもの。
探偵ごっこをしようとする者。
様々な人が校内で溢れていた。
俺はと言うと恥ずかしいことに腰が抜けて立てない。
さっきから"あ"の一文字しか出せてないのだ。
「うわぁ、殺人事件が起きたんですか!」
その大声に俺は我に返る。
そして横には目を輝かせて身を乗り出し立っているボブヘアーの少女。
さっきまでざわざわしていたのにそれも止まっている。
ただ、話を止め大声を発した少女を凝視していた。
朝日に照らされ茶髪の髪はいっそう明るく、目は無垢の子供が初めて世界の事を知った目をしており、何よりここの高校の夏服に身を包んでいた。
だが、見覚えは一切無い。
俺も生徒全員を把握しているわけではないのだが、こんなに明るい性格の子が居れば、覚えていないはずがない。
それに俺の好きなタイプにドストライクなので余計。
少女を見上げて凝視しているとスーツを来た大人に避けるよう言われたので立ちあがり避ける。
ようやく警察が来たようだ。
俺らは邪魔なようで規制線を張られ、閉め出された。
数分後、第一発見者として俺は呼ばれた。
何故か横にあの少女も。
聞くとこの子もあの時間に近くに居たという証言が出たらしく一緒に連れてきたと言うこと。
へえ、この子もあのとき居たんだ、全然気がつかなかった。
あのときの事情、俺とその子以外に人が居なかったかとかその他諸々を事細かに聞かれた。
終わったのは昼。
後はこっちで捜査するからと追い出されてしまった。
他の子は帰ったか、事情聴衆を受けてるかの二卓らしく、横の教室から少し声が漏れていた。
折角だから、一緒に帰ろうとあの子が誘ってきた。
無茶ラッキー。
とは言うものの何を話せばいいか分からず、話を切り出そうと横を向くが、話が出てこずまた下を向く、を繰り返していた。
学校から一歩出たとき、横の子が口を開いた。
「私、如月って言うの!お父さんの転勤が決まって此処に引っ越してきたんだけど真逆、言って早々殺人事件に出会すなんてねー驚いちゃったな。」
そう言って染々空を見上げながら言う。
横顔が光に照らされ肌の色と影の色のコントラストがいっそう激しい。
「ねえ、君の名前は?何て言うの。」
「え?」
「君の名前だよ!若しかしてないとか言わないよね?」
「あぁ・・・お、大空 たつる、樹の方ね。よく田に鶴って書く方と間違えられるんだ。」
「そうなんだー。大空 樹君ね。ん、覚えた。」
「如月さんの下の名前は?」
自分で言っといて何だけど何聞いてんだよ、俺!
女子の、それもタイプの子の名前聞くなんて!
頭の中でワタワタしながら横を向く。
如月さんは顎を指で叩きながらんー。と唸って、笑わない?と首を傾げた。
うん、と力強く頷くと渋々承諾してくれた。
「如月 ゆうか。幽霊の幽に花で幽花。変な名前でしょ?」
そう言ってあはは、と力無く笑った。
その時に自分から出た言葉に自分でも驚く。
「そんなこと無いよ。綺麗じゃんその名前、いいと思うよ。」
そう言うと、如月さんはキョトンとして、ありがとう。と満面の笑みで返してくれた。
その笑顔は向日葵のように元気で太陽のように眩しかった。
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