少女という

@ka-e

第1話 口許は微笑んで

私はこの歳になってなお、『少女』という言葉に並々ならぬ執着がある。今だってこれからも『少女』でいたいと心から思う。それは若い女の子たちのファッションを真似るとか、若作りした言動をとるとか、そんなのではなくて。






『少女』とは私にとって精神とあり方なのだ。






十歳の時分。男に生まれるべきだったはずだと悩みながら案外ワンピースや足音の可愛らしいヒールのある靴が好きで、男の子のような服装も似合わない。身体も華奢で、鍛えても太ろうとしてもあまり結果がでない。せめて女性的な身体つきになりたくなくて身体に余計な丸みがつかないよう保った。元々太りにくい体質なので苦でもなく。意識と周囲と自分と挫折。色々なものががちぐはぐで自分がバラバラになってしまいそうだった。


バラバラになりそうな自分を搔きよせながら迎えた一二歳の時分、『少女』という時間。無敵。『少女』とは無敵だ。あんなにか弱そうに見えて儚いのに。


よく「守ってあげたくなる」と男に言われたけれど守ってほしいと思った事など一度もなかった。触れられるくらいなら震える細い脚でようよう立っている方がましだ。「今が一番綺麗なのよ」と歳上の女性に言われたけれどそんなことはしっかりと解っていた。それでもそんな事は顔に出さずに「ありがとう。」と口許で微笑んでおくのだ。


守られたくもなくて、褒め言葉もいらないけど、無言で攫ってくれる人がいたなら誘拐される覚悟で攫って頂いたかもしれない。






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