第三章 恋する魔法少女
第21話 ワイドショー
『次のコーナーは、ゴンちゃんの裏読み編集局です。ゴンちゃーん?』
『はい! 小木ゴン太でございます。早速、今日の一枚目から捲っちゃいましょう! (ババンッ!)渋谷区のベテラン魔法少女、遂に結婚か? 相手は超セレブのIT社長?!
水曜日発売の週刊フレッシュに、今や魔法少女最高齢となった椿美紀子女史が株式会社ラプラスCEO田村阿覧氏と都内の高級ホテルにて過ごした甘い2時間半! との見出しが掲載されました。報道内容を詳しく見て行きますと、このホテルには田村氏が長期滞在しているそうで、深夜、人目を避けるように一人でホテルを訪れた椿女史は、2時間半の滞在の後、二人して玄関先まで出てきて熱烈な抱擁を行ったということです。その様子がこの写真です。(ババンッ!)』
『おー! ガッツリ行ってますね! まるでドラマの一シーンみたいだ! ゴンちゃん、このお相手はどんな方なんですか? かなりのイケメンっぽいけど』
『はい、五郎さん。この田村阿覧氏なんですが、年齢は32歳。父親がアメリカ人母親が日本人のハーフで日本生まれ。大学はアメリカの名門スタンフォード大学を卒業。シリコンバレーの有名IT企業を渡り歩き、その後、3年前に日本にてネットベンチャーのラプラスを起業。上場すれば2千億は下らない企業価値があるともっぱら噂されているIT界の寵児だそうです』
『パソコンだとかインターネットに僕は疎いけど、まだ32でしょ? この若さで2千億の資産って、椿ちゃんとんでもない玉の輿じゃないの! おっと! すみません。29歳の女性掴まえて「ちゃん」は無いか! 僕には、バブルの頃に活躍した、かわい子ちゃんだけど勝気な椿ちゃんのイメージが強く印象に残ってるからなぁ。彼女くらいだよ、顔と名前が一致するの。マホショってどんどん入れ替わるからなぁ。って、あれ? マホショってチョメチョメしたらダメつうか、すんません! お昼にこんな話題を出して、テレビの前の奥さん方! ゴンちゃん、関係したらマホショじゃ無くなっちゃうんじゃなかったっけ?』
『ええそうです! なので、魔法省には抗議の電話が殺到しているという話ですよ。でもご安心を! どうやらスケベの五郎さんやテレビの前の奥様方がご期待している様なことは無かったみたいで、今日も元気に椿女史は渋谷の空をパトロールしている姿が目撃されていますので、渋谷上空からの生中継をどうぞご覧ください! 渋谷上空の安藤君?』
『――ババババババ!!!(へりからの空撮映像に切り替わる)
渋谷上空の安藤です。えー、渋谷区上空を偵察飛行中なのでしょうか? 現在、ヘリの横10メートルほどで飛行しています現在大注目の魔法少女、椿美紀子さんに突撃インタビューを敢行したいと思います。
椿さん! ラプラスの田村CEOとの結婚はいつ頃を予定されているのでしょうか?』
「あ、あのー! 魔獣探索中なので椿先輩は答えられないと思います! 広報を通して取材してください!」
『オーっと! 椿さんを隠すように、同僚の魔法少女がカメラに被ってきました!』
「え? え? これって生放送ですか?! 私の姿が全国に流れてるの?!」
『すいません。うちに番組、関東ローカルです』
「あーそうなんだぁ。危なかった! お母さん見てる? とか言っちゃうところだった」
『あの、後輩として椿さんの交際はどのように感じていますか?』
「んー。そうですねぇ! 確かにアランさんはイケメンでお金持ちだけど、私はハートが一番大事だと思います。29歳にもなって一目惚れなん……」
――ボカッ!
(美紀子に殴られ、墜落していく琴葉)
『なんか今、殴りませんでしたか?』
「アランさんとの事は、どうぞ暖かい目で見守って頂けたら幸いです。どうやら後輩が魔獣のオーラを感じたみたいですので、これで失礼します!」
『椿さん! 待ってください! パイロット! 急降下は? 何? 規制で出来ないの? 以上です編集長! スタジオにお返しします!』
『ゴンちゃん。確かに魔法少女の姿で飛んでたね。椿ちゃんの貞操は守られているようで僕は安心しました! さて、CMを挟んだ後に、専門家を交えて討論していきましょう』
――チャチャチャララーン!
(CMに入る)
『気になる洗濯物の臭い。諦めてませんか?
――トゥルルルル! ポンッ!
新発売のクリーンマジックは、魔獣撃退成分を配合。突然の魔獣発生も新成分アンチマジカルパウダーで撃退! 魔獣の好む不快臭いを抑え、あらゆる魔獣を寄せ付けません!
「これで、魔女が出ても安心!」
「クリーンマジックを使ってから、魔獣に遭遇する事が無くなりました!」
さぁ、みんなでクリーンマジックを使って魔獣フリー生活を体験しよう!
(コメントは個人の感想で、効能を医学的に保証するものではありません。当社製品を使用したことによって、魔物被害に遭遇した場合に当社として一切補償をするものでは無いことをご了承ください)』
『――タタタンタンタン、タンタンタンタン。
「ケルベロスに家を壊されたって? 大変ですね」
「ええ、でもミノタウロス生命の魔物安心保険に入っていたから、建て替えの間のアパート費用も保証してくれるのよ」
「え! ミノタウロス生命の魔物安心保険って、魔物による住宅破壊の保証だけじゃなくて、住宅が修繕されるまでの生活保障もしてくれるの?」
「ええ、しかも今なら毎日タバコ一箱分の費用で済むのよ」
「国の保証も申請してからすぐには支払われないから、ミノタウロス生命の魔物安心保険に入っていた方が安心ね」
――タタタンタンタン、タンタンタンタン。
ミノタウロス生命の魔物安心保険。魔獣に襲われる不安から解放され、ストレスフリーの日常を提供する、一歩先行く損害保険。』
『今夜7時からの愛するより愛されたいは……。
「少しは家庭を大事にしなさいよ!」
「不倫もしないし、家族サービスだって人並みにしているつもりだけど」
「じゃあ、これは何なのよ!」
(パネルに張り出される、夫の魔法少女グッズ)
「こ、これは、新宿区に勤めてるし、地区を護る魔法少女を応援するのは日頃の安全を守ってもらっている感謝の気持ちを表そうと……」
「嘘をつくんじゃないよ! このロリコン野郎!!」
魔法少女に入れ込む夫、そんな夫に不満が募る妻。
――ババ―ン!
「あんた、こんな情けない夫とは、さっさと別れちゃなさい!」
「こんなの可愛いもんじゃないか。不倫したりキャバ嬢に貢いだりしてるわけじゃなし。え? グッズに百万円!?」
「僕も、鉄道模型には数百万つぎ込んでますよ」
「だから、あんたはダメなのよ」
豪華パネラー陣で送る怒涛の60分! 果たして、妻は愛想をつかして離婚届を叩きつけるのか?』
(CM明け)
『さぁ、ここからは専門家を交えて討論していきたいと思います。魔法少女ウォッチャーの柴田さん、どうですか今回の報道を見て』
『うーん、一つの時代の終わりを感じちゃいますね。椿なんてもうババアなんで僕は興味ないんですけど、新陳代謝して新人が入ってくるといいなぁ。あと、中継に出てた琴葉ちゃん! あの子大注目! ピンクのツインテールなんて王道を行く魔法少女をあれほど理想的に体現している子はいませんよ! デュフフフ』
『魔物専門家の堀内さんは如何ですか?』
『渋谷は多様な魔女・魔獣が出現するホットスポットですからね。全盛期から衰えたものの第一級の魔法少女が引退するのは痛手なんじゃないですかねぇ』
『なるほど、同じ女性として千代子ちゃんはどう?』
『そうですねぇ。なんかぁ。アランさんってイケメンじゃないですか? それが年増の椿さん選ぶなんて、そういうところもすごいイケメンだと思いません?』
『まったく、何訳わかんない事言ってるのよ! 崖っぷちの椿美紀子が超玉の輿をゲットしたの羨ましいってハッキリ言ったらどうなんだい!』
『美千代さん! まだ一巡まえですから落ち着いて! え? 何、CM?! すみません。時間になりましたので、一旦CMです。この後は、東京チョット言い店、若奥様大変身、突撃隣の旦那様です』
――チャチャチャララーン!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます