第4話
そんなこんなで気がつけばもう8時だ。今から帰って晩ご飯を作るとなると確実に9時を回る。
「彩月、ここで食べてかないか?」
幸いこのデパートにはフードコートがある。確か少し遅めまで開いているはずだ。
「……まぁ、たまには外食というのもいいかもしれませんね」
なぜか少し残念そうな彩月だった。
後でなんかデザートを買って機嫌をとることにしよう。
案外ちょろい妹なのだ。
「おぉ、風馬……」
聞き覚えのある声がした。具体的に言うならいつも俺の席の後ろにいるやつの。
「彩月、帰るぞ」
「待って、せめて最後まで言わせて」
「じゃあ最後まで言ったら帰るからな」
「つれないことを言うなよ、マイフレンド」
運があるのか無いのか……まぁ、確実に無いな。
そこにいたのはクラスメイト兼友人の望だった。
「で、なんでお前がここにいるんだ?」
「映画を見に来てたんだよ、今ちょうど飯を食べようと思っててね、そっちは妹さんと買い物?」
「あぁ、そんなところだ」
「ここで会ったのも何かの縁だ一緒に飯を食べていこうぜ」
「お前、1人で……すまん彩月、こいつがいても大丈夫か?」
彩月には悪いのだが、ここはひとつ了承して頂きたい。なんせ彼は1人で映画を見て、1人で晩ご飯を食べようとしているのだから。
「私は構いませんよ、佐々木さんですよね。に、兄がいつもお世話になっています」
今、いつもの感じでにぃ、って言いかけてたよな。
しかし世の中には触れてはいけないものがあるのだ。友人が1人映画に来てる理由とかは特にね。
ほら、言うじゃないか、触らぬ神に祟りなしってさ。
「やっぱ、お前にはもったいないな妹だな」
そう言って、注文を取りに行った。
俺達はその間に席を確保しておく。
「悪いな、彩月」
「いいですよ。食事は人が多い方が楽しいと言いますし」
本当に俺にはもったいない妹だ。よく出来ている。わがままも文句も言わないで自分のやることをやっていく。
ただ、兄としてはもう少しわがままも文句も言ってくれても構わないのだが。
とりあえず、デザートを増やしてあげよ。
せめてもの罪滅ぼしだ……いいや、ご褒美といっておいた方がいいのかもしれないな。
「お待たせ、注文してこいよ」
望が帰ってきた。
手にはアラームを持っている。料理が出来るとあれで呼び出されるという訳だ。
「彩月、行くぞ」
「あ、はい」
そうして2人で席を立つ。
「彩月はどうするんだ?」
「にぃと同じがいいです」
と、言うわけで2人とも温野菜のパスタになったわけだ。
望には「ほんと、仲がいいのな」と笑われた。
妹は顔を赤くし、俺は軽く望の肩を叩いておく。
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