11話 初めてのお仕事 盗賊退治3


 ドゥラークと子供二人を外に逃がした事で、盗賊達は騒ぎ出します。


「クソっ!! 売る予定のガキを逃がされたぞ!!」

「いや、目の前にいるガキを見てみろ。逃がしたガキよりも金になりそうだ」


 盗賊達のうち二人が、私を捕まえようと近付いてきます。

 大人二人ならば、子供一人くらい捕まえられるとでも思ったんですかね。

 丁度その時、別の盗賊の一人がさっき殺した盗賊に近付いて行きます。 


「お、おい。起きろ!! お前が逃がし……え?」

「どうした!! そいつをさっさと起こせ!!」


 もしかして、寝ているだけと思っているんですか?

 どれだけ起こしても起きる事はありませんよ。死んでいますからね。

 私に近付いてきていた二人も足を止めて死んでいる盗賊を見ています。

 私から視線を逸らすなんて……馬鹿ですね。


 私はそっと近づき、二人の心臓を背中から一突きます。

 二人はその場に静かに崩れ落ちました。


「し、死んでいる……」

「「な!?」」

「て、てめぇ!! 殺りやがったのか!! って、その二人……血が……お、お前、その剣に滴っている血は……」


 何を驚いているんでしょうね。

 私達は敵同士でしょう?

 それとも、盗賊達は自分が死なないとでも?


 私はキョロキョロと周りを見ます。


「冒険者は人を殺すのを躊躇(ためら)うみたいですから、自分達は殺されないとでも思いましたか? それは甘いですよ。貴方達だって、こんなに殺しているじゃないですか。もしかして、殺しておいて殺される覚悟が無いんですか?」


 私の言葉に激昂した盗賊の一人が矢を射ってきます。が、この程度の遅さの矢なんて当たるわけがないでしょう。

 私は飛んできた矢を掴みます。


「な!?」

「お返ししますよ」


 私は、矢を射った盗賊に向かい矢を投げつけます。射られた速度よりもはるかに速く投げつけましたから、矢を掴んだだけで驚いていた盗賊が止められるわけがありません。

 矢は、盗賊の額に刺さり、その場に倒れます。


「あと……七人」


 私は、残った盗賊を指差して数えながら笑顔で尋ねます。


「で? どうするんですか?」

「え?」

「え? って何ですか? クズ仲間が死んだからといって、呆然としている暇があったら、復讐とでも叫びながら襲ってきたらどうですか? まぁ、ただ死にたいのであれば、そのままジッとしておいてもらってもいいですけどね」


 動かない方が殺しやすいですからそっちの方が良いんですが、それはそれで面白くありません。


「ふざけんじゃねぇ!!」


 盗賊の一人が奇声を上げながら、私に斬りかかってきます。

 ドゥラークの話ではここにいる盗賊はBランク以上の冒険者でしたね。

 でも、襲いかかってくる姿を見る限り、そこらの雑魚……ゴブリンと同程度に見えますよ。

 しかしですね。昔の栄光をいつまでも持っているのかは知りませんけど、心臓を守る胸当てくらいは着けた方が良いですよ。ゴブリンだって急所を守っていますよ。まぁ、余程の自信があるのならわざわざ動きにくくしてまで胸当てを着ける必要はないのですが……。

 あぁ、私は着ていませんよ。

 だって、こんな雑魚達の攻撃なんて、喰らうはずありませんから。


「どちらにしても遅いですよ」


 私は持っていた剣で、盗賊の心臓を突き刺します。

 あ、知っていましたか?

 心臓は左胸にあるんじゃなくて、中心くらいにあるんですよ。

 肋骨というのに守られているので、前から刺すのが大変らしいです。


 まぁ、私の場合は肋骨を砕いて、そのまま貫きますけど。


 盗賊は、その場で力を無くし前に倒れます。

 剣はちゃんと抜いてあげましたよ。刺さっている間は死なない事が多いそうです。抜くと血が噴き出して死ぬそうですよ。怖いですねぇ……。


「これであと六人ですか。」


 流石の盗賊も状況が悪くなってきたのが分かってきたらしく、逃げ出す奴も出てきました。


「はぁ……逃げられるとでも思っているのですか?」


 

 私は逃げた奴を追い、首を撥ねます。

 あと五人。


 首を斬ると血が噴き出すので、私自身が汚れてしまうんですよね。

 まぁ、服と身体を綺麗にする魔法もありますけど……。


 今は血塗れの姿の方が恐怖心を掻き立てますかね。

 するとその姿に怯えた盗賊の一人が、青い顔で私の前で座り込みます。

 股間にはシミのようなモノがありますね。漏らしましたか。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!! お前等は、俺達を捕まえに来たんじゃねぇのかよ!?」

「え? 殺しに来たんですよ?」

「ふざけんなよ!! 俺達だって命があるんだぞ!!」


 この人は何を言っているんですかね。

 依頼書には殺しても構わないと書いてありましたよ。


「これを見てください。これは貴方達に対する依頼書なんですけどね、ここに【生死を問いません】と書いてありますよね。読めますか? だから、貴方達を殺しても問題ないんですよ。ギルドが殺して良いと決めた瞬間、貴方達の命はそこに落ちているゴミと大して重さが変わらなくなっているんですよ」

「ふざけんなよ!! 俺達も好きで盗賊をやってんじゃねぇんだよ!! それにギルドが殺していいと決めたって何だよ!! 俺達がこんな生活をしているのはギルドのせいじゃねぇか!?」

「そうなんですか?」


 まぁ、面白そうなので理由だけでも聞いてみましょうか。


「ギルドが俺達を除名したから、こんな生活になったんじゃねぇか!!」

「除名されたって事は、何かをしたんですよね。それって逆恨みでしょう?」

「ふ、ふざけんな!!」


 別にふざけていないんですがね。


「ふざけるな、というのなら、貴方が除名された理由を教えてくださいよ。もし、面白ければ助けてあげて、尚且つギルマスであるカンダタさんに話を通してあげますよ?」

「ふざけんなよ!! 面白いわけがないだろうが!!」


 私は、この盗賊の太ももに剣を刺します。


「ぎゃあ!!」

「面白くないんでしたら死んでくださいよ。あと五人殺さなきゃいけないんですから、貴方一人に構っている時間は無いんですよ」

「じゃ、じゃあ……聞かせてやる」


 いや、別に聞きたいわけじゃないんですけど、話したいなら聞きましょうかね。

 盗賊によると、依頼の失敗が多くなり、依頼主が怒鳴ったそうです。そして、激昂した彼は依頼人を殺したそうです。そのせいでギルドから除名されたそうです。

 たたでさえ自業自得なのに、さらに盗賊業に堕ちて罪を重ねているくせに、いつかは冒険者として返り咲きたいそうです。


「えっと、全然面白くないですね。そもそも除名されたのは貴方が馬鹿だっただけですし、盗賊をやって悪事を積み重ねておいて冒険者に返り咲くって……頭でも湧いているんですか?」

「う、うるさい!!」

「まぁ、良いです」


 下らない話のせいで時間を無駄にしました。

 首に剣を突き刺し、こいつも殺しておきます。


 これで四人。


 ここに残っているのはあと三人ですね。

 もう話を聞く必要もないですし、アッサリ殺してしまいましょう。



 残っていた盗賊を全員殺し、最後の一人が待つ部屋へと向かいます。

 二階部分の一番奥の部屋。どうやらここにいるようです。


 私は部屋の中の気配を感じ、中にいる男に向かい扉を蹴り飛ばしますが、中の男は扉をいとも簡単に斬ってしまいます。

 男は、私を一目見てため息を吐きます。


「随分とお転婆なお嬢ちゃんだな。他の連中はどうした?」

「殺しましたよ。盗賊なんていう下らない事をしているから殺されるんですよ」

「くくく……お嬢ちゃんが殺した奴等にも事情があったと思うのだが? お前の正義はその事情を一蹴できるほどのモノなのか?」

「正義? 私はお仕事をしているだけですよ。そもそも盗賊になった事情なんて興味もないですよ。それとも、奴等は貧困で……とか、ギルドに裏切られた……とかですか? そんなモノ自業自得でしょう」

「ほぅ……、ならばお前がここで死ぬのも自業自得という事でいいんだな」

「私は死ぬんですか? 貴方程度に私が殺せるんですか?」

「ふふふ、強がるのなら強がればいい。俺は元Aランクの冒険者だ。お前のランクは何かは知らん「Sランクですけど?」……なに?」


 そう言えば、カンダタさんがSランクは問題児と言っていましたね。

 という事は、Aランクよりも上という訳では無いですよね。

 もしかしたら、この男も知らないかもしれませんねぇ。


「ふん。Sランクなんて聞いた事も無い」

「ギルマスであるカンダタさんが言っていたので間違いないでしょう。貴方が無知なだけですよね」


 男はスッと立ち上がり、剣を持ちます。


「俺に勝てると思っているのか?」

「はい。一方的に殺せると思っていますよ」


 気配を察する限り、そこまで強くも感じませんし。

 あ、カンダタさんやギルガさんはかなり強いと思いますよ。

 まぁ、負けませんけど。


「お前……俺を知らないのか?」

「知りませんよ。冒険者を挫折して盗賊に堕ちたクズですよね。もしかして、自分が有名だとでも思っているのですか?」


 男は剣を抜く。

 男の剣は赤く光っている。アレは魔法剣ですか?


「俺の魔法剣に勝てると思うなよ。カンダタよりも強い俺に勝てると思わない事だ。その証拠にカンダタは俺を倒しに来ない。アイツは俺に怯えているんだよ!! だからこそ盗賊団を結成し、冒険者ギルドに復讐するために「あのー」なんだ!?」

「下らない話は良いんですよ。カンダタさんは貴方よりもはるかに強いですよ。貴方を直接殺しに来ないのは、貴方と違って彼が責任ある立場だからです」


 私は男の間合いに踏み込みます。男も私を斬ろうと剣を振り下ろしますが、私はその腕を掴みます。


「くっ、良く俺の剣を止めたな」

「いえ、腕を掴んでいるだけです。こんな小さな女の子に腕を掴まれて、腕を動かせないなんて情けないですねぇ」

「クソっ、なんて力だ」

「力だけではありませんよ」

「な!!?」


 私は男の右腕を焼き尽くします。そして、そのまま腹部を蹴り、仰向けに倒します。


「ぐはぁ!!」


 私は男の胸付近を踏みつけます。


「ぐっ!?」

「さて、今から遊びましょう」

「な、何!?」


 まず、その顔が気に入りませんねぇ。

 私は、男の顔を徹底的に殴ります。

 暫く殴ると、顔が一回り大きくなったので、とある魔法を使います。

 実はエレンと出会う前に開発をしたんですが、今までは使い道のなかったとっておきの魔法があるんですよね。それをこいつに使っておきます。

 


 さて、終わりましたね。

 男を一階に下ろしておこうと思ったのですが、下の部屋が騒がしいです。


 私は男を引きずり部屋を出て、エントランスを見下ろします。

 すると、そこにはカンダタさんがいました。


「カンダタさん」

「レティシア! 無事だったか」

「無事って、こんなクズ共に負ける事はありませんよ」

「そうか……その男は?」

「あぁ、元Aランクだそうですよ。顔の原型が残っていないので元の顔が分からないと思いますが……。あぁ、魔法剣士でした」

「魔法剣士? あぁ、アイツだな……まぁ、お前が無事でよかった。しかし、他の奴等は殺したのに、こいつは殺していないのは何故だ?」

「あぁ、この男は貴方に恨みがありましたので生かしておきました。事情聴取でもなんでもしてください。ただ、三日後には悶え苦しんで死にますので早めに事情聴取をしてくださいね」

「なんだと? そんな魔法があるのか?」

「はい。作りました」


 カンダタさんは盗品等の調査もあるらしく、ここに残るそうです。

 私はドゥラークの言っていた、形見の話をしておきます。

 エレンは治療院にいるそうなので、あとはカンダタさんに任せて、私は町へと帰ります。

 勿論、自分の体を魔法で綺麗にしてからです。

 あぁ、早くエレンに会いたいです。

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