一段、一段に灯る火
一段一段、道の脇にある灯籠に火を着けながら本堂へ向かう。
行く道もそうだが、来た道さえ先が見えない。
最後の灯籠に火をつけると、ぼんやりと本堂の影が浮き上がる。
懐中電灯を再び着け、本堂影をなぞっていく。
焦げ茶色の色に黒い木目が波打っている。
賽銭箱は所々苔が生え奉納と書いてあった面影がうっすらと残っている。
本当に神様が居るのだろうかと思ってしまうほどの年期の入りようだった。
一向は取り合えずお祈りをし、神社に背を向ける。
火を消しながら、ふと願い事がもう一つあったことを思い出し、振り返る。
「どうしたの、帰るよ。」
阿呆らしい。
少し掠めた考えを鼻で笑った。
「何でもない。」
「そう、じゃあいこ。」
そうして、無事階段を降り最後の蝋燭を消し、各々の帰路につく。
それから一週間たった。
ピコンッ
「夏実が消えた。」
予期していたことが起きてしまった。
急いで海風のもとへ行く。
あの後送られてきた住所に足を運ぶと、もうすでに自分以外の全員が来ており、海風に事情を聴いているらしかった。
声をかけると、皆が一斉にこちらの方を向く。
「何があったの?
「消えたって言ってもいいのかなぁ、あれ。」
菫に聞くと、首を左に傾け、どうだろ。と返す。
え、消えたって行方不明とかそう言うことじゃないの?
「何て言ったらいいんだろうなぁ、あれ説明するのむずいと言うか、実質あり得ないと言うか・・・」
「何でもいいよ、話して。信じるから。」
歯切れの悪い
簡単に言えば、消えたは姿が、ではなく"友人夏実の存在事態が"ってことらしい。
経緯はと言うと、夏実が待ち合わせ場所に一向に来ないので、夏実の家に足を運ぶと、夏実のお母さんが迷惑そうに"どなたですか?"出てきたらしい。
いつも、そんな顔を向けられたことがなかったし、夏実のお母さんが嫌がるような粗相はしていないと思うので、違和感が頭の中にあったらしい。
「夏実と遊ぶ約束をしていたんですが、こちらにまだ、いらっしゃいませんか?」
「夏実、そんな子ここには居ませんよ。何かの間違えではないでしょうか?」
そう言って、一方的にピシャリと扉を閉められたらしい。
表札を見ても、携帯で住所を確認しても場所は同じ。
最初に着いた環奈は顔面蒼白な海風を見て、驚いたそうだ。
最初は、混乱して言いたいことが纏まらず、単語だけを発していたが、その後来た
その話を聞いた後、海風の様子を伺う。
目は血走っていて、焦点は定まらず、瞳が小刻みに震えている。
目の光はない。
この状況でも、その話を聞いて、信じるには安かった。
取り合えず、日も傾いてきたので、友人Bを家へ返し、帰路に向かっていた。
夕焼けこやけが流れている。
「ぉ・・・・に・・・・し・。」
それの最後に聞こえたノイズ混じりのあの声は一体なんだったんだろ。
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